2008年7月26日土曜日

ピートとパパの会話(JAZZ編その3)



パパ 「さ~て前回、ビーバップの出現には、アメリカが
     抱えている社会的背景があった、と分かったね」
ピー 「うん、人種差別の問題だね。換言すれば、人種差別が
    無ければビーバップの出現もなかった?」
パパ 「かも知れないね。歴史とは皮肉なものだよ」
ピー 「で、これからJAZZはどうなるの」
パパ 「ここで、マイルス・デイヴィスにご登場願おう」
ピー 「マイルスって、'死刑台のエレベーター'の?」
パパ 「おっ! 知ってるじゃん」
    「マイルスは、実家が歯医者を営んでいて、黒人では
    あったものの、経済的には何も不自由しなかった」
ピー 「お坊ちゃまだね」
パパ 「そう、そのことが後に、JAZZの変遷に大きな影響を与え
    ることになるのだよ」
ピー 「お坊ちゃまとJAZZの変遷? わからないな~」
パパ 「話を進めよう。マイルスは、ビーバップの創始者の一人
    であるパーカーに弟子入りするんだ」
ピー 「ボンボンの気まぐれなんだろ~」
パパ 「いや、マイルスは真剣にビーバップに取組んだが、うまく
    いかないんだな、これが」
ピー 「どうして?」
パパ 「前回、ビーバップは、抑圧された人間の解放感や自由への
    願いから生まれたと言ったね」
ピー 「うん。ということは、マイルスは経済的に恵まれていたから、
    自由とか解放とかの精神を余り持ち合せていなかった?」
パパ 「そう考えるのが合理的だろうね。だからビーバップをうまく
    表現できなかった。これは、テクニックの問題じゃないね」
    「ビーバップは、パーカーのような抑圧されたヤンチャ坊主
    でないとうまくやれないんだな。で、マイルス自身も そのことに
    気付き始めたんだ」
ピー 「で、パーカー一座と別れるんだろ。お決まりのコースだね」
パパ 「そうなんだけど、ここからがマイルスの偉大なところさ」
    「ビーバップのあまりの激しさに閉口したマイルスは、
    どこかもの静かで、洗練された都会的センスを持つ
    JAZZを創り出すんだ」
ピー 「わかった! ’クールの誕生’だね。しかも、この都会的センスは、
     お坊ちゃまのマイルスだからこそ 創り得た!」
パパ 「そのとおり! 以来、ホットなビーバップに対して、
    マイルスのJAZZをクールジャズと呼ぶようになった」
    「これ以降、ニューオリンズ、デキシーランド、カンサス・シティ、
    スウィング、ビーバップと続いてきたJAZZが、白人プレーヤー
    をも多く排出するようになり、更には公民権運動へと
    繋がって行くのさ」
ピー 「歴史の一こまを見るようで面白いね」
パパ 「長くなったから、つづきは次回にしよう」