ピー 「最近は音楽を聴いてないの?」
パパ 「先日、山男をしている友人から音楽会に行ったと便りがあった」
ピー 「何の音楽会?」
パパ 「クラシック、タンゴ、ポピュラーだと言っていた」
「気になったのは、タンゴの曲がリベールタンゴだったこと」
ピー 「リベールタンゴって?」
パパ 「アルゼンチンのアストル・ピアソラという人が作曲したタンゴだ」
ピー 「ピストルと間違えそうだね。タンゴも聴くの?」
パパ 「音楽は分け隔てなく何でも聴いとるよん」
ピー 「タンゴって、トリオ・ロス・パンチョロスとかだろう?」
パパ 「それはラテンだ。それに名前はトリオ・ロス・パンチョスだよ」
ピー 「で、リベールタンゴがどうとかって?」
パパ 「スペイン語で Libertango、ラテン語の Libertas が語源だ」
ピー 「英語で言えば Liberty かな?」
パパ 「そうだす、自由って意味だす。そこが気に入ってるのさ」
ピー 「また何かありそうだな~」
パパ 「ある。先ずリベールタンゴを聴いてよう」
「本当はピアソラ五重奏団の演奏で聴きたいんだけど、youtubeに
無いから、若き日のヨー・ヨー・マで聴いてみよう」
「多分、聴き覚えがあると思うよ~」
「ヨー・ヨー・マのチェロが素晴らしいだろ」
「では、この曲でタンゴを踊ってみよう」
ピー 「お~、洗練された動きだねぇ」
パパ 「この曲は20年ほど前、サントリーがCMに使っていたんだ」
「しかし、ピアソラの演奏はもっと情熱的だったなぁ」
ピー 「そもそもピアソラって、どういう人なの?」
パパ 「ピアソラは、タンゴの作曲者でバンドネオン奏者でもある」
ピー 「上の写真で、バンドネオンを一杯に引張ってる人だね」
パパ 「15歳頃までニューヨークで過ごし、タンゴよりジャズに興味が
あったらしい」「で、ブエノスアイレスに帰り、タンゴを始める
んだが、ニューヨークで育っただけあって前衛的なんだなぁ」
ピー 「作曲もしたの」
パパ 「したんだが、保守的なブエノスアイレスのタンゴ界からポコペン
されたんだ」
「日本で言えば、義太夫をロックのリズムで演奏するくらい
違和感があったと思うよ」
ピー 「おやおや」
パパ 「元々タンゴは踊りの伴奏音楽なんだけど、踊り手からも、
こんな曲で踊れるか、と文句が出た」
「それでまたニューヨークに戻り、細々と演奏活動をしていた」
ピー 「亡命のようだ。ニューヨークという所は自由なんだね」
パパ 「その後ピアソラは、パリに渡ってクラシックの作曲法も勉強
したんだ」
ピー 「タンゴなのにクラシックの勉強をしたの?」
パパ 「この時ピアソラは、タンゴに限界を感じていたんだ」
「だからクラシック音楽に活路を見出そうとした」
ピー 「保守的なタンゴとの葛藤だね~」
パパ 「渡仏したピアソラは、ナディア・ブーランジェに師事するんだ」
ピー 「その人は?」
パパ 「この人は当時、世界的に有名な音楽教育者で、ドビュッシーや
ストラヴィンスキーの影響を受けていたらしい」
ピー 「ピアソラは、その人から作曲法を学んだの?」
パパ 「指導は厳しく、バッハの平均律クラヴィーアの暗譜や、フーガの
即興演奏もやらされた」「他に対位法や和声法といった一般的な
楽典教育も受けていたんだよ」
ピー 「フーガって?」
パパ 「ほら、ザ・ピーナッツが歌っていた恋のフーガだよ」
ピー 「あ~、主旋律を追い駆けて行くやつかぁ」
パパ 「ピアソラのタンゴ曲には、フーガの技法を使っているものも
あるらしいが、この時の影響だろうね」
「カデンツァの技法なんかもそうだ」
ピー 「カデンツァって、古典派に出てくる即興演奏のことだろう?」
「ジャズでも盛んにやるよね」
パパ 「ピアソラのタンゴは、ジャズ・バロック・古典・ロマン派・
シャンソンの複合形式のようだ。それにジプシー的な哀愁も漂う」
ピー 「そいうことが解ってくると、ピアソラのタンゴも面白そうだなぁ」
パパ 「タンゴの発祥が、ジャズと同様の歴史を持つというのも興味深い」
ピー 「おや、そうなの」
パパ 「ところがさ、恩師ブーランジェから、やはりあんさんの感性を
生かすのはタンゴじゃ~、との教示を受けて目覚めるのさ」
ピー 「ほう、感性を見抜くとは、流石教育者だね~」
パパ 「そしてタンゴに復帰し、次第に人気も出てきた」
「折りしも、パリで大変なタンゴブームが起こったのさ」
ピー 「コンチネンタル・タンゴだろう」
パパ 「その後、ピアソラは前衛的なタンゴを引っ下げて、アルゼンチンに
帰国を果たす」
ピー 「ふむふむ」
パパ 「先程のリベールタンゴは、ピアソラが保守的なブエノスアイレス
のタンゴ界に反発して作曲した、とパパは思っている」
ピー 「だから、リベールタンゴと命名したのかぁ」
「他にはどんな曲を作曲したの」
パパ 「では、ピアソラが作曲した cafe1930 を聴いてみよう。
センチメンタルでもあり、とてもジプシー的な曲だ」
「クラシックの影響もこの曲から聴きとってみよう」
ピー 「タンゴとは思えないね」
パパ 「次に映画の主題曲になったスールという曲を聴こう」
「スールとは、スペイン語で南という意味だよ」「パパの大好きな曲だ」
ピー 「ほう~、ショパンのバラードをタンゴのリズムで聴いて
いるような・・、シャンソンとしての趣もあるな~」
パパ 「この曲はピアソラの作曲じゃないけど、映画のためにピアソラが
編曲したんだよ」
「それでは、由緒正しい保守的なブエノスアイレスのタンゴ、
オレ・グアッパを聴こう。アルフレッド・ハウゼ楽団だ」
ピー 「俺・河童だって~?」
ピー 「お~、正に由緒正しい舞踏音楽だ。これなら踊れる」
パパ 「なっ」
ピー 「ピアソラというのは、タンゴ界の革命児だったのかぁ」
パパ 「んじゃ最後に、小山実稚恵のピアノ演奏で、スペインの作曲家
グラナドスの演奏会用アレグロという曲をを聴いてみよう」
「タンゴのルーツが聴き取れるかもしれない」
また、利用規約違反とかでYOUTUBEから消されちまったい(怒)
この人ので我慢しよう。感情表現に乏しいようだけどね。
ピー 「ピアソラ、ジャズ、タンゴ、アルゼンチン、スペイン、シャンソン、
ジプシー、ブーランジェ、バッハかぁ」「音楽皆兄弟だ~」