2009年12月26日土曜日

ピートとパパの会話(その74 リベールタンゴ)


ピー  「最近は音楽を聴いてないの?」
パパ 「先日、山男をしている友人から音楽会に行ったと便りがあった」
ピー  「何の音楽会?」
パパ 「クラシック、タンゴ、ポピュラーだと言っていた」
    「気になったのは、タンゴの曲がリベールタンゴだったこと」
ピー  「リベールタンゴって?」
パパ 「アルゼンチンのアストル・ピアソラという人が作曲したタンゴだ」
ピー  「ピストルと間違えそうだね。タンゴも聴くの?」
パパ 「音楽は分け隔てなく何でも聴いとるよん」
ピー  「タンゴって、トリオ・ロス・パンチョロスとかだろう?」
パパ 「それはラテンだ。それに名前はトリオ・ロス・パンチョスだよ」
ピー  「で、リベールタンゴがどうとかって?」
パパ 「スペイン語で Libertango、ラテン語の Libertas が語源だ」
ピー  「英語で言えば Liberty かな?」
パパ 「そうだす、自由って意味だす。そこが気に入ってるのさ」
ピー  「また何かありそうだな~」
パパ 「ある。先ずリベールタンゴを聴いてよう」
    「本当はピアソラ五重奏団の演奏で聴きたいんだけど、youtubeに
    無いから、若き日のヨー・ヨー・マで聴いてみよう」
    「多分、聴き覚えがあると思うよ~」

    「ヨー・ヨー・マのチェロが素晴らしいだろ」
    「では、この曲でタンゴを踊ってみよう」
ピー  「お~、洗練された動きだねぇ」
パパ 「この曲は20年ほど前、サントリーがCMに使っていたんだ」
    「しかし、ピアソラの演奏はもっと情熱的だったなぁ」
ピー  「そもそもピアソラって、どういう人なの?」
パパ 「ピアソラは、タンゴの作曲者でバンドネオン奏者でもある」
ピー  「上の写真で、バンドネオンを一杯に引張ってる人だね」
パパ 「15歳頃までニューヨークで過ごし、タンゴよりジャズに興味が
    あったらしい」「で、ブエノスアイレスに帰り、タンゴを始める
    んだが、ニューヨークで育っただけあって前衛的なんだなぁ」
ピー  「作曲もしたの」
パパ 「したんだが、保守的なブエノスアイレスのタンゴ界からポコペン
    されたんだ」
    「日本で言えば、義太夫をロックのリズムで演奏するくらい
    違和感があったと思うよ」
ピー  「おやおや」
パパ 「元々タンゴは踊りの伴奏音楽なんだけど、踊り手からも、
    こんな曲で踊れるか、と文句が出た」
    「それでまたニューヨークに戻り、細々と演奏活動をしていた」
ピー  「亡命のようだ。ニューヨークという所は自由なんだね」
パパ 「その後ピアソラは、パリに渡ってクラシックの作曲法も勉強
    したんだ」
ピー  「タンゴなのにクラシックの勉強をしたの?」
パパ 「この時ピアソラは、タンゴに限界を感じていたんだ」
    「だからクラシック音楽に活路を見出そうとした」
ピー  「保守的なタンゴとの葛藤だね~」
パパ 「渡仏したピアソラは、ナディア・ブーランジェに師事するんだ」
ピー  「その人は?」
パパ 「この人は当時、世界的に有名な音楽教育者で、ドビュッシーや
    ストラヴィンスキーの影響を受けていたらしい」
ピー  「ピアソラは、その人から作曲法を学んだの?」
パパ 「指導は厳しく、バッハの平均律クラヴィーアの暗譜や、フーガの
    即興演奏もやらされた」「他に対位法や和声法といった一般的な
    楽典教育も受けていたんだよ」
ピー  「フーガって?」
パパ 「ほら、ザ・ピーナッツが歌っていた恋のフーガだよ」
ピー  「あ~、主旋律を追い駆けて行くやつかぁ」
パパ 「ピアソラのタンゴ曲には、フーガの技法を使っているものも
    あるらしいが、この時の影響だろうね」
    「カデンツァの技法なんかもそうだ」
ピー  「カデンツァって、古典派に出てくる即興演奏のことだろう?」
    「ジャズでも盛んにやるよね」
パパ 「ピアソラのタンゴは、ジャズ・バロック・古典・ロマン派・
    シャンソンの複合形式のようだ。それにジプシー的な哀愁も漂う」
ピー  「そいうことが解ってくると、ピアソラのタンゴも面白そうだなぁ」
パパ 「タンゴの発祥が、ジャズと同様の歴史を持つというのも興味深い」
ピー  「おや、そうなの」
パパ 「ところがさ、恩師ブーランジェから、やはりあんさんの感性を
    生かすのはタンゴじゃ~、との教示を受けて目覚めるのさ」
ピー  「ほう、感性を見抜くとは、流石教育者だね~」
パパ 「そしてタンゴに復帰し、次第に人気も出てきた」
    「折りしも、パリで大変なタンゴブームが起こったのさ」
ピー  「コンチネンタル・タンゴだろう」
パパ 「その後、ピアソラは前衛的なタンゴを引っ下げて、アルゼンチンに
    帰国を果たす」
ピー  「ふむふむ」
パパ 「先程のリベールタンゴは、ピアソラが保守的なブエノスアイレス
    のタンゴ界に反発して作曲した、とパパは思っている」
ピー  「だから、リベールタンゴと命名したのかぁ」
    「他にはどんな曲を作曲したの」
パパ 「では、ピアソラが作曲した cafe1930 を聴いてみよう。
    センチメンタルでもあり、とてもジプシー的な曲だ」
    「クラシックの影響もこの曲から聴きとってみよう」
ピー  「タンゴとは思えないね」
パパ 「次に映画の主題曲になったスールという曲を聴こう」
    「スールとは、スペイン語で南という意味だよ」「パパの大好きな曲だ」

ピー  「ほう~、ショパンのバラードをタンゴのリズムで聴いて
    いるような・・、シャンソンとしての趣もあるな~」
パパ 「この曲はピアソラの作曲じゃないけど、映画のためにピアソラが
    編曲したんだよ」
    「それでは、由緒正しい保守的なブエノスアイレスのタンゴ、
    オレ・グアッパを聴こう。アルフレッド・ハウゼ楽団だ」
ピー  「俺・河童だって~?」

ピー  「お~、正に由緒正しい舞踏音楽だ。これなら踊れる」
パパ 「なっ」
ピー  「ピアソラというのは、タンゴ界の革命児だったのかぁ」
パパ 「んじゃ最後に、小山実稚恵のピアノ演奏で、スペインの作曲家
    グラナドスの演奏会用アレグロという曲をを聴いてみよう」
    「タンゴのルーツが聴き取れるかもしれない」
また、利用規約違反とかでYOUTUBEから消されちまったい(怒)
この人ので我慢しよう。感情表現に乏しいようだけどね。

ピー  「ピアソラ、ジャズ、タンゴ、アルゼンチン、スペイン、シャンソン、
    ジプシー、ブーランジェ、バッハかぁ」「音楽皆兄弟だ~」