2009年6月5日金曜日

ピートとパパの会話(その59 ジャズピアノとオーディオ)


ピー  「今回は、ジャズピアノとオーディオの話かな?」
パパ 「1969年頃、パパがオーディオ装置で初めてジャズピアノを
    聴いた時の話だよん」
ピー  「40年前かぁ」
パパ 「ところがだよ、クラシックピアノとジャズピアノでは、
    録音された音が何か違うんだよね~」
ピー  「そんなことってあるの?」
パパ 「ジャズの方が、楽器の録音レベルが高い気がするんだな~」
    「それに、和音が入ってくると音が歪んだ感じに聴こえる」
ピー  「録音が下手糞なの?」
パパ 「う~ん・・、最初はレコードプレーヤーに起因する機械振動系の
    不具合だと思っていた」
    「それで、トーンアームのインサイドフォースキャンセルや
    ラテラルバランス、針圧とかを何回も調整したんだ」
ピー  「何の事かわーらんけど、直ったんかいな?」
パパ 「何度調整しても和音が歪っぽい」
    「で、ジャズはあかんわい、と思って聴かなくなった」
ピー  「ジャズの和音は、歪っぽく聴こえるのかぁ」
パパ 「それ以来、レコードでジャズを聴く気にならなかったよ」
ピー  「レコードを聴くというのは、難しいんだね~」
パパ 「ある日、CD化された往時のジャズを聴く機会があった」
    「すると、やはりピアノの和音が歪んでいるんだわさ」
ピー  「トーンアームの問題じゃなかったんだね」
パパ 「そう、録音技術の問題なんだなー、これが」
    「恐らく和音の音が相互干渉して、電子回路の中で歪を発生
    するんだ」「ピアノの音域は広いし、音の強弱も凄い」
    「それが分かるまで、30年以上も要した。バカバカしい」
ピー  「30年! もし最初から分かっていれば、人生変わっていたかも」
パパ 「まぁ、昔のピアノ録音は、大なり小なり歪を発生している」
    「誰もが気付く訳じゃないし、オーディオ装置にもよるだろうね」
    「でもね、和音の歪だけが顕著であって、通常レベルの単音では
    問題ない、としておこう・・・」
ピー  「でもさ、レコードは別として、CDなのにどうして音が歪むの?」
パパ 「昔のマスターテープからCDに録音し直すからさ」「と言う事は、
    既にマスターテープの段階で、ピアノ音源が歪んでいるんだ」
    「だから歪もそのままCDに入ってしまう」
ピー  「マスターテープって何なん?」
パパ 「レコードを作る前に、先ずテープレコーダーに録音するんだ」
    「業界では、そのテープをマスターテープと呼んでいる」
ピー  「ほう、でもクラシックピアノは、どうして歪まないのかな?」
パパ 「クラシックピアノでも、歪っぽい曲がある」
    「ショパンの練習曲12番だ。いわゆる<革命のエチュード>ね」
ピー  「どうなん?」

パパ 「出だしの強烈なフォルツァンドで歪んじゃう」 ↑
    「特に、ショパン弾きの大御所、サンソン・フランソワは、
    この出だしを強烈に弾く」
    「ま、この歪には、ショパンの腹立たしい思いが込められているん
    だけどね」
ピー  「腹立たしい思い?」
パパ 「祖国ポーランドが、ロシア軍に占領されたからだよん」
    「そして、ワルシャワの独立軍は、抵抗空しく敗れ去った」
ピー  「その腹立たしい思いを音楽に託したんだね」
    「形を変えた抵抗運動だ。音楽は、なんと素晴らしいものよ!」
パパ 「愛国の熱情だね~」
    「だからショパンは、出だしからフォルツァンドの指定をしている」
ピー  「ショパンの熱情が、パパのオーディオ装置を歪ませるんだ」
パパ 「話の続きだが、クラシックはジャズと違って、録音が補正されて
    いる気がする」
    「例えば、フォルテシモの音に対処するため、最初から録音レベル
    を下げておくとか、残響をかけて誤魔化すとかね」
    「それと、元々クラシックピアノは、ジャズのように和音を
    多用しないしね」
ピー  「あぁ、ジャズの場合は、コード演奏がメインになるのか~」
    「さっきも、そのようなことを言っていたよね」
    「そのコードが音を歪ませる原因かな?」
パパ 「ピーやんが言うとおり、音楽性の違いが録音の質に現れている
    のかも知れない」
ピー  「ジャズピアノの録音は、どうしてクラシックと同じ方法を
    取らないの?」
パパ 「分からんね。演出方法の違いとか、或いは録音コストの問題かも
    知れないし・・・」
    「分かっているのは、ジャズがクラシックほど感情豊かな表現で
    無いということかなぁ」
ピー  「うん? 理解し難いな」
パパ 「ジャズの演奏時間は、高々3分から10分の間だろう」
    「その僅かな時間で、豊かな感情表現を期待するのは、無理
    というもの」「時間が短すぎる」
ピー  「分からんでもないね」 「でも、クラシックでも短い曲があるよ」
パパ 「しかし、表現豊かだ」「そこは、作曲者の感性の違いだろうね」
    「ジャズは、一定した感情を持続させているだけの感じがする」
    「ロックは、ジャズよりもっとメリハリが少なく感じる」
ピー  「一定した感情表現の持続ね~、そう思って聴くとそうかも」
    「う~ん、リズム中心の音楽は、どうしてもそうなるのかなぁ」
    「それが、録音性能に影響するのかも知れないね」
パパ 「でもね、西ドイツのMPS社の録音は、当時としては良い音がした」
ピー  「歪が少ないの?」
パパ 「そう、なんたってオスカー・ピーターソンが驚いたんだからね」
ピー  「現在の録音技術でも歪むの?」
パパ 「ディジタル録音は、全く歪まない」「そらもう雲泥の差だ」
    「でも、その強烈なダイナミックレンジの音が嫌いな人もいる」
    「アナログは面白いんだけど、問題が多くて解決できない事象も
    あるんだ・・・」
ピー  「ふ~ん」「あのさ、ピアノの話題が多いけど、サックスとかは
    嫌いなん」
パパ 「嫌いじゃないが、音が大きくて喧しい」「それに、ピアノや
    弦楽器は、子供の頃から慣れ親しんだきた音だからね」
ピー  「だから、音が小さいミュートトランペットを聴くんだね」
パパ 「ところでさ、楽器の分類でサックスは何楽器だと思う?」
ピー  「そんなの金管楽器に決まってるじゃん」
パパ 「どうして?」
ピー  「金属で作られているもん」
パパ 「ちゃう、木管楽器だ」
ピー  「何ぃー!、嘘だろう?、金属なのにどうして木管楽器なんよ?」
パパ 「材質は関係ないんだ」「管の穴の開閉で音程を変えるのが
    木管楽器」「唇の振動で音程を変えるのが金管楽器」
ピー  「何とまぁ、理解し難い分類だな~」
    「つまり、木管楽器は穴の開閉によって管の長さが変わるから、
    音程が変化するんだね」
パパ 「そうそう、だからサックスやフルート等は木管楽器」
    「よし笛やオカリナも木管楽器だよ」
    「トランペットやホルン等は、唇の動きで音程を変化させるから
    金管楽器に分類される」
ピー  「ん? トランペットやホルンもピストンバルブで管の長さを
    変えるよ~」
パパ 「そーなんよ、でも唇の振動を基本とするから金管楽器」
    「因みに金管楽器にピストンバルブが付いたのは、ずっと後だよ」
ピー  「でもさ~、普通に考えれば金属の管楽器は金管楽器だぜぃ」
パパ 「ふふ、では、ホラ貝は何楽器か?」
ピー  「なっぬ~~?・・・・貝楽器だ」
パパ 「ホラ貝は、唇の動きで音程を変化させるから金管楽器」
    「これほんとう」
ピー  「・・・・・」
パパ 「イヒヒ、常々パパは、何故 東京芸大にホラ貝科が無いのか
    不思議に思っちょる」
ピー  「パパと話すと疲れるよ」