2008年12月25日木曜日
ピートとパパの会話(その39 男女同権とは?)
パパ 「さーて、今回は男女同権の話だよ」
ピー 「いまさら?」
パパ 「お爺さんは山へ柴刈に、お婆さんは川へ洗濯に・・」
「これ、どう思う?」
ピー 「また古臭い言い方だねぇ。日本むかし話だ」
パパ 「でもさ、ちゃんと仕事を分担して生活をしているよね」
「むか~し昔その昔は、力仕事は男性で、そうでない仕事は
女性がしていた」
ピー ふむふむ、役割分担があったんだ」
パパ 「しか~し、腕力の強い男性は、次第に剰余生産物の蓄積を
行なうようになったんだなぁ」
ピー 「牧畜や農耕によってだね」「原始的蓄積の始まりだ」
パパ 「そう、それによって貧富の差が生じ出したんだ」
「さてここで、前回のボーヴォワール女史に御登場願おう」
ピー 「サルトルとかいうおっさんと生活していた人だね」
パパ 「ボーヴォワール女史は、男性による富の支配が女性を
男性に隷属させた根本だと言っちょる」
ピー 「富と権力が男性に集中したという事かな」
「女性は、生産力と生産手段を持ち得ず、社会から阻害
されたんだね」
パパ 「そう、簡単に言うとボーヴォワールは、この阻害が解消しない
限り男女間の同権や平等はあり得ない、と言っている」
「女性にとって、ボーヴォワールの言う ’最大の不幸’の事態が
生じたのさ」
ピー 「えれ~こっちゃ」「しかし、誰もそんな認識を持っていないよ」
パパ 「そこを論理立てて説明したのがボーヴォワールの '第二の性' だ」
ピー 「ほほう、女性としての実存から投企を行い、かかる事態の本質を
導き出したんだね」「それが実存主義哲学ということかぁ」
パパ 「よう分からんが、そういうことらしいぞ」
「というのが、ボーヴォワール女史の歴史観だ」
「そして、女性は社会から阻害されたことにより、家庭労働という
中に閉じ込められたんだ」
ピー 「分かった! 女性は、阻害されたことで男性より能力が劣るという
誤った評価を受けたんだ」「それが更なる隷属へ繋がった」
「何か階級制度みたいで不平等極まりないね」
パパ 「そう、そこにイデオロギーの入り込む隙を与えたんだなぁ」
ピー 「にゃるほど、マルキストにとっては格好の攻撃材料だ」
パパ 「ところでさ、女性は、占い・手相・信仰・恋愛・神秘・幻想
といったことを好むだろう」
ピー 「女性本来の性質じゃないの?」
パパ 「ちゃうね! これは作られた性質だよ」
「先ほど言ったじゃんか。女性は、社会的に阻害されたと」
ピー 「それが何か?」
パパ 「女性は、社会的組織としての労働に携わることが少なかったから、
技術や論理という普遍的な考え方を習得できなかったんだ」
ピー 「あぁ、それで音楽科とか文学部に女性が多いのかぁ」
パパ 「だから過去、技術や論理から離れて行った女性は、次第に
情緒的な考え方をするようになった」
ピー 「という事は、男性に従属せざるを得ないから、論理的な思考を
必要としなくなったのか~」
パパ 「そのどうしようもない事実の解決方法が、占いであり、手相であり、
信仰であった訳だよ」「ま、多少は男性にも言えるけどね」
ピー 「そっか、女性の好みや考え方は、社会的に阻害された中から
出てきたもので、女性特有のものではないのか~」
パパ 「だから女性は、科学的な説明よりも、近所の女性の悪口を信じるん
だよ」
ピー 「ちょっと言い過ぎじゃないの」
パパ 「じゃが女性は、男性を通じて社会へ入り込む扉を開こうと試みた
んだ」「結婚という当時の階級的隷属を通してね」
「んで母親は、女の子には一生懸命裁縫や料理を教え込んだのさ」
「ボーヴォワールは、これを自分の母親に対する復讐だと定義付けた」
ピー 「女性にとっての結婚は、他のいかなる経歴よりも有利なんだね」
「だから結婚に理想を抱くのかぁ」
パパ 「理解できたかね」「これがボーヴォワールの描いた女性の
ロマンチシズムだ」
「ここに、恋愛と結婚は別という可笑しな考え方が生じたのさ」
ピー 「ボーヴォワール自身は、サルトルと愛人関係にあったんだろう」
「どうして結婚しなかったんだろう?」
パパ 「そらもう、当時の結婚の本質は隷属だと理解していたから、対等で
あるなら結婚という過程を踏む必要が無いという考え方だよ」
「自由であり、且つ、お互いを必要とする共同生活だ」
ピー 「そうか、夫婦別姓もそういうことだね」
パパ 「ま、以上が40年以上前の考え方だけど、現在では違ってきたね」
ピー 「どういう風に?」
パパ 「ボーヴォワールの頃は、確かに労働は男性の仕事だった」
「しかし、社会の進歩により多種多様な労働形態が生まれた結果、
女性の職場も広がった」「力を必要としない事務労働や頭脳労働、
パート労働なんかもそうだね」
ピー 「男女雇用機会均等法もできたしね」
パパ 「まだまだ均等でないにしろ、女性も生産手段を持ったというか、
経済的価値を生み出せるようになった」
ピー 「男性に隷属している必要が無くなったんだ」
「経済的価値を生み出せる女性は、自由を手に入れたんだね」
パパ 「結婚年齢が上がっているのも、それが原因だと考えられる」
「問題は、農耕文明発生時代の男女関係の風習が、未だに
残っていることだよ」
ピー 「家事労働は、女性に任せているということかな」
「おっ母が、パパもそうだと言っていたよん。へへ」
パパ 「ま、ま~ね」「ところでさ、おっさんが定年退職すると同時に離婚
する夫婦がいるだろう。何故だと思う?」
ピー 「喧嘩したんじゃないの」
パパ 「ちゃう、おっさんが経済的価値を生み出せなくなったから、隷属
している意味が無くなったんだよ」
「だからおばさんは、自分の分け前である分配財産を貰って、
さっさと離婚しちまったんだ」
ピー 「契約結婚だった?」
パパ 「そのようなものだね。元々対等な結婚じゃないからそうなる」
「ところがおっさんの方は、この契約は満期になっても自動継続だと
思っちょる」
ピー 「はは、だからおっさんは、離婚理由が分からずアタフタするんだね」
パパ 「離婚すれば年金も半々受給になるから、おっさんには厳しい
老後になるぞえ~」
ピー 「う~ん、男女同権であるには、女性が経済的に独立している必要が
あると言う事かぁ」
「でも、おっさんが退職しても、そのまま自動継続する人もいるよ」
パパ 「そら、契約以上のものがあるからだろうね」
「ボーヴォワールは、この点については何も言っちょらん」
ピー 「ほほ、実存主義哲学の限界だ~」
パパ 「どうやら結論に達したようだね」
「ついでに言うと、女性差別と勘違いしてはいけない例がある」
ピー 「勘違い?」
パパ 「高野山は女人禁制だろ」
ピー 「それこそ男尊女卑の世界だ」
パパ 「昔、進駐軍の女性将校が、ジープで高野山へ行き、ここは女性差別
甚だしい、直ぐに山門を開放しろ、と迫ったんだ」
「この時、高野山のお坊さんが何と言ったと思う?」
ピー 「'じゃかましい、ここは男の世界じゃ、帰れ' 、だろ」
パパ 「違うね、’あなたの国には修道院という所があると聞いて
おります。そこは男性も入れますか?' と問うたんだ」
ピー 「何とまぁ~上手に断ったものだ」
パパ 「女性将校は、納得してジープで帰ったとさ」
「高野山は、修行の場なんだよね」「そこで女人の姿がチラチラ
すると、チラチラする方へ目が行くというものだ」
ピー 「なるへそ、チラチラが目に映っても動揺しないように修行を
しているんだね」
パパ 「そうだよ、女性差別とは違うのさ」
「さて、次回はチョコット身近な話題をやらかそう」
ピー 「身近、何かあるん?」
パパ 「回転寿司だ」
ピー 「なんじゃそれ」