2009年1月12日月曜日

ピートとパパの会話(その41 Knney Drew)


パパ 「久しぶりにジャズの話題といこう」
ピー  「上の写真は何?」
パパ 「左はケニー・ドリューというジャズピアニストの
    CDジャケット」「中央は1971年のパリ・シャンゼリゼ通り
    のCAFE。真ん中でネクタイを締めているのがパパだ」
    「右は、在りし日のパリの街角シーンだよ」
ピー  「なんかさ~、ダサイ格好してるね~、パパ」
    「亜細亜人丸出しの顔でさ」
パパ 「言うな、当時の日本じゃ、これでも流行の先端だ」
ピー  「で、ケニー・ドリューとは?」
パパ 「ケニー・ドリューは、1961年にアメリカからパリに移り住んだ
    んだ」「その時のパリの印象をジャズに綴ったのが
    今回話題にする 'パリ北駅着、印象’というCDなんだ」
    「パパが、パリのオルリー空港に降り立つ10年前だ」
ピー  「また古い話だね~」
パパ 「このCDは、プレミアが付いて入手困難となっている」
    「しかも、演奏が垢抜けしていて、日本人との共同プロデュース
    ときたもんだ」
    「昨年、初めて聴いた時から探し求めて、やっと手に入れたんだ」
ピー  「探し求める程エエもんなん?」
パパ 「ケニー・ドリューというのは、日本では余り人気がないし、
    パパも名前しか知らなかったね」
ピー  「なのにまたどうして急に?」
パパ 「偶然、彼の '枯葉' を聴いたのさ」
ピー  「その時の印象は?」
パパ 「彼のピアノ演奏には、おったまげたねー」
    「例えば、バド・パウエルやラッパのマイルスのように、
    アメリカの泥臭さというものを感じない」
    「ヨーロッパ的な、極めて洗練された印象を受けるね」
ピー  「ほう、コンチネンタル・ジャズだね~」
パパ 「しかも、そこかしこにクラシックのピアノ奏法が窺えるねぇ」
    「オスカー・ピーターソンやキース・ジャレットに似通って
    いるが、どちらかと言えばキースに近い印象だ」
ピー  「ピーターソンもキースもクラシックをやっていたんだね」
パパ 「そう、キースは今もクラシック演奏をするよ」
    「パパは、枯葉の演奏に惚れこんで、このCDを買ったんだけど、
    同じ枯葉が入っているケニーの他のCDでは、アドリブが
    違うんだなぁ」
    「で、一番気に入った演奏の 'パリ北駅着、印象’を
    数ヶ月掛けて探し求めたのさ」
ピー  「前にも言っていたけど、同じ曲で演奏が違うってのは問題だね」
パパ 「そう、ジャズの欠点でもあるね。即興演奏じゃなく
    アドリブでね。よく混同している人がいるけど」
ピー  「クラシックでも指揮者によって、曲の印象が変わるじゃん」
パパ 「楽譜でも違う。その為、有名オーケストラでは、
    ライブラリアンという専門の楽譜管理者を置いている」
ピー  「楽譜って全部同じじゃないの~?」
パパ 「ちゃう、信用おけない出版社のものは、大抵加筆や修正が
    されている。その話はまた別途」
    「でさ、このヨーロッパ的な洗練さは、ベースのペデルセンに
    よるところが大きいと思うね」
ピー  「ペデルセンって名前からして北欧人?」
パパ 「デンマークだ」
    「ペデルセンは、レイ・ブラウンのようなゴツイ感じの
    バッキングじゃなく、演奏に洗練された軽快さを感じるね」
ピー  「という事は、ケニー・ドリューにうまくマッチングした
    演奏ということかな」
パパ 「そのとおり。ベストマッチだ」
    「同じCDの No Greater Love を聴くと良く分かる」
ピー  「しかし、パパにしては個別の演奏者の事を色々喋るね」
    「ジャズの本質が分かれば、それで良いんじゃなかった?」
パパ 「そう、今までは、アメリカの泥臭いジャズばかり聴いてきた
    からそれでよかったんだ」
    「ばってん、ヨーロッパのジャズを聴く事により、今まで
    隠れていたアメリカという国の人種差別の酷さが理解できた」
    「そのきっかけが、ケニー・ドリューの演奏だ」
ピー  「そのアメリカの酷さというのは?」
パパ 「アメリカジャズの本質は、以前に語ったよね」
    「そこから先の話なんだけど、収入を得るためにヨーロッパへ
    渡った黒人ジャズメンは、芸術家のような待遇を受けるんだなぁ」
    「そして、本国とは比較出来ないほどの自由を味わったのさ」
ピー  「アメリカは、ヨーロッパの迫害から逃れてきた人々が建国
    した自由の国じゃなかった?」
パパ 「パパもヨーロッパより遥かに人種差別が少ないと思っていた」
    「じゃが、実際は反対だった。ってことが、ジャズを通して理解
    することができた」
ピー  「ジャズを聴き出した甲斐があったというものだね」
パパ 「そうだ、ジャズは普段触れることが少ない自由だとか
    人権だとかも教えてくれる」
ピー  「歴史もね」