2009年5月16日土曜日

ピートとパパの会話(その55 成果主義の問題点?)


ピー  「上の写真は?」
パパ 「昔のレコジャケだ。今回の話とは何の関係もな~い」
    「さてさて流行の先端、成果主義の話だよん」
ピー  「パパもやってきたの?」
パパ 「そらもう、十何年間その真っ只中にいた」
    「成果主義を取り入れたのは、日本でも一番早かったかな」
ピー  「ほう、体験者なんだ」「で、どうだったの?」
パパ 「導入当初は、週刊誌とかで絶賛されたね」
ピー  「凄いじゃん」
パパ 「しかし、そうでもないんだなぁ」
    「導入前に研修を受けたんだが、本質は人件費削減の何ものでも
    無いと感じたね」
ピー  「ん? どういうことよ」
パパ 「企業は、バブルが弾けて人件費の抑制に躍起になっていたんだ」
    「それで目標を掲げて、その達成度に応じて報酬を決めようとした」
    「要は下を切って上に上乗せする」「真ん中の成績でも減額し、
    全体の人件費の圧縮を図ったんだ」
ピー  「理に適っているじゃん」「何か問題でも」
パパ 「問題は、目標設定の仕方だね」
    「最初の何回かは、皆さん高い目標を設定していた」
    「じゃが、達成しなければ給料が下るしぃ」「そのうち達成
    出来ると分かっている目標しか立てなくなった」
ピー  「最初から達成できる目標を設定するんだぁ。ズルイ」
    「するとさ、全員が同じ成績ちゅーことになるなぁ。変なの」
パパ 「それで、目標設定時にチャレンジ度とか難易度とかの項目を
    追加し、それを数値で示すようになった」
    「だけどさ、目標設定してもトラブル対応ばかりで成果が出せない
    社員もいる」「配置転換で業績が出せない場合もある」
    「また、ルーチンワークしかやらない部門は、目標設定が
    大変難しい」
ピー  「なるほど、個人によって仕事内容が異なるんだね」
    「目標設定の期間は?」
パパ 「当初は半期(半年)だったが、無理だと分かってきたので、
    全部門とも通期(年度)で設定しても良いということになった」
ピー  「なるほど」
パパ 「でもね、基礎研究なんかやっている連中は、そんな短期間での
    目標達成なんか無理だよ」「研究所なんか一体どうするんだい」
    「しかも目標値は、皆さん人事考課上意識的に低く設定するし~」
ピー  「難題が難題を呼ぶんだ」
パパ 「そこで、達成までの過程を考慮に入れようということになった」
ピー  「過程の評価?、どういう基準で評価をするのかな~?」
    「大体さ、成果主義ってどれくらいの差がつくの?」
パパ 「営業管理職の場合、年収で数百万円に達する」
ピー  「え~! そら小細工もしだすし、悪さをする奴も出てくるな~」
パパ 「北米や首都圏などの営業と東北・九州などの地方営業では
    物凄い地域差が出るし、金額で評価される営業は堪らない」
    「そうこうしているうちに、1700億円近い赤字が出たね」
ピー  「ええ! 倒産するじゃん」
パパ 「平時ならこれくらいの赤字は何でもないよ」
    「それより問題は、社員にチャレンジ精神が無くなったことだね」
ピー  「それって、成果主義を取り入れたから?」
パパ 「ま、大きな原因の一つだろうね」
ピー  「何とかしなきゃ」
パパ 「目的が人件費削減だから、何ともならないね」
    「しかも、思っても見なかった弊害が出てきた」
ピー  「弊害?」
パパ 「個人的に銭が絡むから、他人が困っていても誰も助けなく
    なった」「次第に連帯感も無くなったね」
    「そこで人事は、チームでの評価も考慮すると言い出した」
ピー  「おかしい? 成績を一番知っているのは現場の管理職じゃない」
    「それに、人事は全部門の評価が出来るほど物事を知っていると
    は思えないな」「なのに人事で評価するの?」
パパ 「気が付いたかね~。そう、最終評価を人事でやるんだ」
    「ってことはね、総人件費が決まっていて、それに見合うように
    人事で成績を調整するんだ」
ピー  「それは改ざんだ」「一体何の為の成果主義なん?」
    「結局、建前だけじゃん。日本の企業は駄目だね~」
パパ 「社員は、皆それを知っているから真剣にやらなくなった」
    「口の悪い連中は、人事の奴らの成績を上げるために、ワシらが
    犠牲になっていると言っていたな」
ピー  「人事って何よ?」
パパ 「人事は、人を育てるのが仕事だ。しかし、今は人を排除する
    ことが仕事になった」
ピー  「おいらは、そんな部門にいたくないな」
パパ 「それに現場の管理職は、目標設定と成果の評価をするために、
    部下の個人面接を毎回しないと駄目なんだ」
    「数日間、面接ばかりの日もあるよ」
ピー  「何か無駄だな~」「通常の仕事ができないじゃん」
    「今でも同じ事をやってるの?」
パパ 「しているね」「結局、成果主義を取り入れた企業は
    皆おかしくなった」「それで成果主義を止めた企業もあるよ」
ピー  「どうしてそうなるのかね?」
パパ 「そら、日本の経営者が Made in USA に弱いからだよ」
    「聞くところによると、米国のある企業が成果主義のプログラムを
    売り込んで来たらしい」
ピー  「それは、米国文化の上に成立っているんだね」
パパ 「米国は、成果主義を容認できる文化と社会体制や制度が整備
    されていると思う」
    「日本は、ILO条約の批准が1/4に過ぎない」「そういう中での
    成果主義の導入だ。これはもう、如何ともし難いね」
    「日本は、まだまだ労働後進国なのさ」
ピー  「日本は、米国の真似をして制度だけ導入するんだね」
    「だから失敗する」
    「そもそも日本企業は、新しいシステム体系を生み出す能力に
    欠けるんじゃないのぉ?」「だから米国依存になるんだ」
パパ 「手厳しいけど、そうだと思うね」
    「日本的な個別の条件を考慮できない企業は、成果主義を導入
    すべきじゃないね」「会社がおかしくなる」
ピー  「じゃ、年功序列や終身雇用が良いって事」
パパ 「そうじゃなく、今の成果主義は日本に合わないし、あまりに
    性急な導入だったから問題ばかり生じた」
ピー  「解決方法は?」
パパ 「止めればいいと思うよ」
    「逆に社員のモチベーションが、以前のレベルに戻ると思う」
    「日本の強みを生かさなきゃ」
ピー  「じゃー、何故止めないの」
パパ 「経営者にその度胸が無いんじゃないかな」
    「ある時さ、個人的に知っている他業種の管理職から
    エグイことを言われたんだ」
ピー  「エグイこと?」
パパ 「その人が言うには、今回、うちの会社も成果主義を導入する
    ことになった。で、研修に行ったら、成果主義の悪い例として、
    お前んとこの会社が紹介されてたぞ~、って」
ピー  「悪い例? 失礼だね~」
パパ 「ハハ、事実だよ」「ある時それを、人事にモノが言える人に
    話したんだけどね~」
ピー  「そしたら?」
パパ 「現状の成果主義が悪いのは分かっているんだ」
    「しかし、代替案がないから継続せざるを得ないんだ。ってさ」
ピー  「アホや。救い難い」