2009年2月13日金曜日

ピートとパパの会話(その46 秋葉原?・アキハバラ?・アキバ?


パパ 「秋葉原って知ってる?」
ピー  「何やら凶悪事件ばかり起こるところだろ」
パパ 「それは一面だけだね」
ピー  「あ~、フィギュアとかさ、オタクの集まる場所だ」
パパ 「それもここ最近の話だね。確かに人形屋は増えた」
    「それでは本当の秋葉原を教えよう」
ピー  「本当の秋葉原?」
パパ 「秋葉原は、終戦後旧日本軍の電気部品や進駐軍の
    横流しというか、電気のヤミ市から出発したんだよ」
    「当時の秋葉原は、そういうスラムの街だった」
ピー  「ほ~、ヤミ市ねぇ」
パパ 「そういうヤミ市の生き残りの人が、未だに電気部品の
    店をやっているんだよ」
    「今は量販店になっている秋葉原の何々電気とか、
    何々無線とかは、ヤミ市のおっさんが作った会社だよ」
ピー  「ヤミ市から量販店に育て上げたとは凄いね」
パパ 「今でもね、ヤミ市ではないけど、当時の形態を
    残している店が一杯ある」「頑固親父や江戸っ子気質の
    親父がやっている店だ」
    「実は、そういう店が面白いんだな~」
ピー  「どういう店なん?」
パパ 「電気・電子部品の店なんだけど、真空管からミサイルに
    搭載可能な半導体部品まで扱っている」
    「畳2畳くらいの店が殆どだよ」
ピー  「えー、そんな狭い店で商売が出来るの?」
パパ 「そういう店の存在は、マニアしか知らないけど
    秋葉原には一杯あるね」
    「店員は、マニア以上の知識を持っている人が多い」
    「真空管でも、その製造メーカーの品質から特性まで知って
    いて、マニアに使用法のアドバイスが出来るんだ」
ピー  「凄いね。ヨドバシカメラでは出来ないの?」
パパ 「量販店の店員は、値引き交渉が専門なんだよね」
    「難しい質問をすると、答えが返ってこないけん」
ピー  「ふ~ん、店員さんも大変だね」
パパ 「そのなかに、元海軍少尉がやっている店があったんだ」
    「この店は、電気部品のジャンクというか、要はガラクタを
    売っていた」「店も汚いし、部品に触ると手が真っ黒になる」
ピー  「オエ、商品だろ? 触った手が汚れるなんて信じられへん」
パパ 「そりゃもう、由緒正しいヤミ市の流れを汲む店じゃけんね」
    「で、この海軍少尉は、終戦時に日米両軍の命を受け、
    マッカーサーを日本に無事進駐させるため、沖縄の米軍と
    シーメンスの50kwの無線機で連絡を取ったんだ」
ピー  「そんな話が聞けるの?」
パパ 「大袈裟に言えば、マッカーサーは、この少尉殿のお蔭で
    無事に厚木飛行場へ降り立つことが出来たのさ」
ピー  「飛行機のタラップから、コーンパイプを咥えて降り立つ
    有名な写真だろ」
パパ 「そうだよ~、店に行くと色々喋ってくれたけど、
    2年ほど前に亡くなった」
    「余談だけど、アメリカがイラクで第一次湾岸戦争をやったよね」
ピー  「それが何か?」
パパ 「あの時、砂漠の砂嵐で静電気が起き、半導体の無線機が
    故障したんだ」
ピー  「静電気で故障するの?」
パパ 「で、米軍は、急遽保管していた真空管式無線機を持ってきて
    通信を確保したんだよ」
    「真空管は、核攻撃の強烈な電磁波にも耐え得る」
ピー  「えぇ~? 米軍のような近代的軍隊でも真空管機器を
    保存しているの~?」
パパ 「面白いだろう。その湾岸戦争時の真空管無線機群が、その後、
    秋葉原で大量に出回ったんだ」「少尉殿の店で扱ったんだよ」
ピー  「他にはどんな人がいてはるの?」
パパ 「あるジャンク屋で、一人の若い店員と知り合ったんだ」
ピー  「その店も手が汚れるの?」
パパ 「勿論汚れる」 
    「この青年は、単に電気部品が好きでジャンク屋の店員を
    していると、パパは思っていた」
    「しかし、後でとんでもない青年だということが分かった」
ピー  「ふ~ん?」
パパ 「本職は歯医者でさ、ピアニストでもあったんだよ」
ピー  「え~、また何なんその人?」
パパ 「実は、父親と喧嘩して家を飛び出していたんだ」
    「実家も歯医者だ」「飛行機が好きでさ~、少年のように
    語ってくれた」
ピー  「世の中分からんねぇ」
パパ 「ある日、そのジャンク屋を覗くと、浮かぬ顔をして胃を
    押さえているんだ」
    「話を聞くと、’ウィーンに留学することになって、アパート
    も決まったんだけど、心配で心配で’、ということだった」
ピー  「ウィーンって、音楽留学したんだね」
パパ 「無事帰国して、横浜でピアニストをしていると聞いたよ」
    「秋葉原には、このように身を隠している人も多い」
ピー  「本当は、かなりアカデミックな街なんだね」
パパ 「そうだよ~。もう一人、中古オーディオ製品を扱う親父がいる
    んだが、この親父にも驚かされたな~」
ピー  「どんな親父さん?」
パパ 「風体は、単なる修理屋のおっさんじゃった」
    「実はこのおっさん、ドイツへ2年間留学したピアニストだった」
    「この人は、時々リサイタルを開いているし、奥さんは声楽家だ」
    「話すと控えめな紳士・淑女だったね~」
ピー  「秋葉原って、一体何なん?」「テレビで見るアキハバラと
    全然違うじゃんか」「萌えとかさ~」
パパ 「はは、あれは、アキハバラで一儲けを企む人達の宣伝だ」
    「本当の秋葉原は、もっと学術的な街でもある」
ピー  「秋葉原って、ますます分からん」
パパ 「アキバやアキハバラと秋葉原は、区別して認識すべきだ」
ピー  「なるほど」
パパ 「小さな2畳ほどの部品屋が集まっているビルがあって、
    この人達を取り纏めている親分がいるんだ」
ピー  「知ってるの?」
パパ 「よく部品を負けてもらったよ」「この前大腸がんの手術を
    して煙草を止めた」
    「で、この親分さんは、絶対にこのビルにはフィギュア屋を
    入れん、と言っていた」「電気の街の雰囲気が壊れるそうだ」
ピー  「秋葉原は電気の街で、萌え~、の街じゃないんだね」
パパ 「そうだよ。国家公務員がジャンク屋の店番をしていたりさ」
    「秋葉原とは、そういう面白いところでもある」
ピー  「TV番組で紹介するアキバは、興味本位過ぎて面白くないね」
    「パパは、なんか裏話も沢山知っていそうだな」
パパ 「んだ、秋葉原に長年通っていると、色々なことを耳にする」
    「看板娘の話とか、店のオーナーの息子がどうとか」
    「店のおっさんやアンチャンの趣味とか癖もね」
    「倒産情報とか、手形がどうなったとか、夜逃げしたとかさ」
ピー  「何でそんな情報がパパに入るのさ」
パパ 「そらもう長年秋葉原に通ったからね。ヒヒヒ」