2009年3月17日火曜日

ピートとパパの会話(その50 ランドスケープ)


パパ 「今日は、ランドスケープについて語ろう」
ピー  「ランドスケープって、景観のこと?」
パパ 「そう、景観だよ」
    「日本の景観は、バブルが始まる80年代から何やら変に
    なってきたね」
ピー  「変?」
パパ 「皆が勝手に色やデザインを創り出し、もう滅茶苦茶の景観
    になっちまったよ」
ピー  「例えば?」
パパ 「町屋の中に突然コンクリート作りの金ピカ色のビルが
    出来たりさ」「京都の祇園町にも変なビルがあるよ」
ピー  「ふーん、ランドスケープというのは、統一が取れてないと
    見苦しいんだね~」「でもさ、何故統一できないの?」
パパ 「ま、近代国家としての条例が貧しいんだと思うよ」
    「昔は、条例なんか無くても統一が取れていたんだけどね~」
ピー  「どうして統一がとれていたんだろう?」
パパ 「例えば、フランスだとナポレオンが権力でもって、強烈な
    都市計画を推進しただろう」「経済的な後進性を拭えない
    東ヨーロッパの中小都市、特にハプスブルグ家を頂点とした
    都市国家なんかも、計画的な近代都市として統一的に
    デザインされている」
    「これらの都市は、一時代を制した絶対王権が計画推進した
    からこそ、統一的な景観に仕上がったと思うんだ」
ピー  「外国ばかりじゃん」
パパ 「いやいや、戦国大名が推進した城下町も統一されたデザイン
    だよ」「古代の平城京、平安京なんかもそうじゃない」
    「これらは全て、権力による統治で可能になった景観だと
    考えているんだ」
    「ヨーロッパは、今日までその景観が保存されている」
ピー  「ほう、じゃぁ日本の近年は、一体どうしたんだろうね」
パパ 「う~ん、考えるに、地方分権、建築デザインコンテスト、
    多様性の発展、個性の尊重、欧米様式の流入等じゃないかな」
    「一番深刻なのが、戦後の欧米文化崇拝主義だろうね」
ピー  「崇拝主義は困るね。亡国の景観となるじゃない」
パパ 「そ、どこの国かわからん景色ができあがる」
    「訳のわからん和洋折衷・テカテカモザイクだよ」
    「しかしね、外国観光客には、日本のこのモザイクが面白い
    らしい」「彼らは、モノトーンの風景に住んでいるからね」
ピー  「ふーん、でもさ、欧米先進国の観光客には、やはり純日本風
    の景観が受けるらしいよ」
パパ 「なるほど、それは日本文化に興味を持ってやって来るからだ」
    「先進各国の人々は、工業立国としての日本には興味を示さない」
    「自国と同じ景観なら意味ないし、ま、ジャパネスク趣味かも
    知れないけどね」
ピー  「でもさ~、ヨーロッパの伝統的な景観は、なぜ保存されて
    いるの?」
パパ 「ヨーロッパの伝統的な都市は、歴史の一時期に、どれもが世界
    の中心であったという自負からだろうね」「だから戦争で破壊
    されても、同じ景観に復旧さすんじゃないかな」
    「それと、同一地域に多くの国家が林立しているから、民族の
    同一性を誇示するためにも、自らの景観を保持する必要が
    あったのかも知れないね」
    「また近年、景観は観光資源でもあるし~」
ピー  「観光資源としての経済効果が大きいんじゃない」
    「日本の場合は、戦争に負けて、それまでの価値観をご破産に
    したから、伝統的な景観もご破算になっとる気がするね」
パパ 「そういう歴史観もあるだろうね」
    「ただ、このご破算に関しては、やはり欧米崇拝主義の比重が
    大きいと考えているんだ」
    「で、景観の破壊ちゅーか、モザイクなんだけどね~」
ピー  「はいな」
パパ 「建築家のデザインコンペというか、コンテストがあってね」
    「奇抜なアイデアというか、斬新なデザインにしないと
    入賞できないんだなぁ」
ピー  「だから、京都祇園に金ピカの成金ビルが建つちゅー訳か」
パパ 「コンテストには、景観も審査基準に入れるべきだと思うよ」
    「日本は、残念ながらこの辺の考え方が脆弱なんだなぁ」
ピー  「建築材料は? 鉄骨とかコンクリートとか関係する?」
パパ 「材料は重要だが、景観を支配する要素ではないよ」
    「要は自然環境を含めた周囲とのバランスが、景観の
    良し悪しを決定していると思うね」
ピー  「具体的に言ってよ」
パパ 「近隣で言えば、最近オープンしたイオンモールの外壁の
    配色が良い感じだね」「大きな構造物なのに気にならない」
    「遠望すると、建物が周囲の景観に溶け込んでいる」
    「これは、配色による効果だね~。それと、周りの植林に
    よって、穏やかな景観を醸し出している」
ピー  「言われれば、そうだね」「他には?」
パパ 「特殊なところでは、草津の湖岸に面した三角錐のような
    銀色屋根の宗教施設が面白い」
ピー  「ああ、UFOが着陸したような建物ね。それが面白い?」
パパ 「琵琶湖を挟んで大津側から眺めると、野洲の三上山と対称を
    成しているんだ」「突飛な形だが、背景に三角形の三上山が
    あることで、構造物の違和感を和らげている」
    「それに、屋根が裾広がりの三角錐だから、空間的な圧迫感も
    無い」「惜しむらくは、銀色をもう少し何とか考えたいね」
ピー  「な~るほど、そういう見方をするのかぁ」
    「でも、そこまで考慮して設計したのかな~?」
パパ 「驚きの景観は、湖岸にそびえ立っているホテルだねぇ」
ピー  「ホテルに問題でも?」
パパ 「ホテルは上等だ」「ただ、単なる目印としてしか映らん」
    「これは、独立峰みたいなもので、周囲の景観とは縁が無い」
ピー  「すると、ホテル単体で見れば?」
パパ 「構造的にも興味を引くデザインだね」
    「これを設計したラーメン屋は、なかなかの人だと思うよ」
ピー  「ラーメン屋?・・が設計?」
    「ラーメン大学じゃないよね。塩ラーメン科とかさ」
パパ 「ピートは、何かと食べ物に結び付けたがるね」
    「ラーメンとは、ドイツ語で枠の意味だ」「この枠と梁を
    組合わせたものをラーメン構造と言い、地震などの外力に
    対して強い」「こういうラーメン構造を設計する建築士を、
    ラーメン屋と呼ぶんだ。あはは」
ピー  「なんだ、業界用語じゃんか」
パパ 「次回は、景観をどうすべきか考えて見よう」