2009年3月18日水曜日

ピートとパパの会話(その51 続ランドスケープ)


ピー  「今日は、前回の続きだね」
パパ 「浜大津方面の伝統あるホテルで、正面から見ると遊技場
    のような配色になっちょるものがある」
    「建築家のセンスが・・?だね」
ピー  「周囲の景観とマッチしていないということ?」
    「でも見方によるんじゃないの~」
    「デザインに個性は排除できないよ~」
パパ 「前回から言っているように、建築家が景観を重視しないと、
    町全体が見苦しいモザイク模様になるし、建物の品格も
    無くなる」「単体でデザイン設計するから、浜大津のような
    スイ(粋)な建物になるんじゃないかなぁ」
ピー  「じゃ日本は、戦前からある木造建築にしないと駄目なの?」
パパ 「そうじゃなくて、周囲の自然や既存の建物とのマッチング
    を図らないと」「これには、担当者の文化的素養が必要だ」
ピー  「う~ん、建築家個人が無理なら、これは行政の仕事だなぁ」
パパ 「そうだね、行政は、町全体をどうするかの計画的視野が必要だ」
    「例えば滋賀県なら、琵琶湖とその風景にマッチした建造物の
    基本的ディティールを考えるとかさ」
    「あとは、個別のバリエーションで対応すればいい」
ピー  「壮大なスケールというか、100年計画になるね」
    「経済的な波及効果も必要だよ」「観光を視野に入れるとかさ」
パパ 「それと、全ての電線を地下に敷設しないと、見苦しくて」
    「ヨーロッパの伝統ある都市は、電線が無いから素晴らしい
    景観だ」「電線が空中に張り巡らされている国は、文化的
    後進性の指標だよ」「それと、種々雑多な看板類ね」
ピー  「イタリアのファッション都市を見習えばいいんだ」
パパ 「前にチラッと言ったけど、大津湖岸に東洋一とかのコンサート
    ホール兼用のオペラハウスがあるよね」
ピー  「それが何か」
パパ 「周囲の文化的景観が、それに追いついていないんだなぁ」
    「JRで観劇に来る人は、大津駅で下車する。それが問題だ」
ピー  「そ~かぁ、大津駅は、殺風景だもんなぁ。トイレも昔ながら
    のものだし」
パパ 「だろう、その辺りから何とかせねば」
    「駅前の大通りも寂れた雰囲気だから、洒落たファッション
    通りとしてデザインするとかさぁ。色々考えられる」
    「これには、九州・湯布院の例を参考にするといい」
ピー  「湯布院の例?」
パパ 「かつての湯布院は、ストリップ劇場がある暗い温泉町だった」
    「これでは女性客が来ないし、時代と共に廃れてきたんだ」
    「で、先ずストリップ劇場を無くし、駅前も綺麗に整備し、
    お洒落な店も建てた」
ピー  「すると、どうなったの?」
パパ 「町がお洒落になったことで、女性客が集まりだした」
    「それとともに、おっさんでなく、若い男性も集まりだした」
    「今では、日本有数の洒落た温泉街に生れ変わったのさ」
ピー  「どうすれば人々が集まってくるかを考えればいいのかぁ」
    「知恵が必要だね」「但し、鼻の下が長いおっさんはいらん」
パパ 「そうやって活性化の計画を立てるんだ」「ダムに無駄金を
    使うより、夢があっていい」
ピー  「おー、夢」
パパ 「オペラやコンサートといった芸術を楽しむのなら、周辺に
    お洒落なレストランやカフェも必要だ」
ピー  「食べ物は、おいらの守備範囲だからね」
パパ 「そう、ドッグカフェも必要だし、ちょっと懐に余裕がある
    場合は、資生堂パーラーのようなレストランで食事もしたい」
    「そいうものが、元からある風景と一体になり、初めて文化的
    な景観が出来上がるというものじゃよ」
ピー  「ほう、それが統一的景観かぁ」
パパ 「ところがね、オペラハウスの横に、何やら木造レストランが
    4棟できるそうな」
ピー  「で?」
パパ 「どう見ても田舎の土産物屋なんだなぁ、これが」
    「おまけに日本風の石垣まで積んでいる」
    「洋風物真似・派手派手モザイクデザイン、成金趣味、
    安物の見本だね~」
    「オペラハウスの横だよー!」
ピー  「パパならどうする?」
パパ 「あの場所は、空間として空けて置くね」
    「どうしても建てろというなら、オペラハウスの横だから、
    それに合う上品なデザインに統一する」
    「石垣は積まずに、芝生にしておく」
    「現在作業中の造園デザインは、洋風庭園の中に下手な
    日本庭園を組み込むような、気持ちの悪いものだよ」
ピー  「手厳しいな~」
パパ 「個別のデザインは、似る・似合わないがある」
ピー  「似る・似合わないとは?」
パパ 「神社には、柴犬がよく似合う」「教会には、洋犬が似合う」
    「牧場も、ピート達のような洋犬が似合う」
ピー  「アハハ、確かに。田んぼのあぜ道は、柴犬だな」
    「お洒落なドッグカフェは、おいら達が似合うだろう」
パパ 「和服姿で連れて歩くのは、柴犬がいい」
ピー  「チャンバラにラブラドールは出てこないわな」
パパ 「西洋人が、ラブを連れて散歩しているのを時々見るけど、
    滅茶苦茶 似合ってる」
ピー  「ほう、そうかね」
パパ 「湖岸に林立してきたマンションも、デザイン・色、どれを
    とってもバラバラで見苦しい」「行政力で統一すべきだ」
ピー  「確かにモザイク模様で統一性に欠けるね」
パパ 「ピートも見る目ができてきたね~」
    「それとさ、浜大津と瀬田川間に、変な赤黒デザインで
    水車を付けた小さな観光船が行き来してるじゃん」
ピー  「あー、時々見るけど珍奇な形だねぇ」
パパ 「どう見ても、中国の船にしか見えない」
ピー  「中華料理屋が浮かんでるみたいで、面白いじゃん」
パパ 「琵琶湖には、ミシガンとかビアンカが就航しているんだから、
    珍奇な中国船は似合わないよ。上海や香港なら別だけど」
ピー  「言い出したらキリが無いね~」
パパ 「あのね、琵琶湖周辺の家々が皆瓦屋根の日本建築だった頃は、
    屋形船とかの和船が似合った」「矢橋の帰帆とかさ」
ピー  「琵琶湖の原風景だね」
パパ 「じゃが、周辺の建物が洋風化してきた今日、船も洋風が
    似合うようになってきた」
    「琵琶湖・建造物・船、全部が洋風的なランドスケープを構成 
    していると思わないかい」
ピー  「なるほど、ランドスケープというか、自然な西洋風景を成して
    いる」「社会様式の変化だ」
パパ 「なぎさ公園のドイツ館の横に松並木を配した広場がある」
    「これは、近江八景の晴嵐の松を模したものだと思うんだ」
ピー  「綺麗じゃないの」
パパ 「ドイツ館には、近江大橋横にあるメタセコイヤが似合うよ」
    「あのメタセコイヤをドイツ館まで延長すべきだね」
    「そうすると、近江大橋からドイツ館、更にはプリンスホテル
    までの景観が統一できる」「あの辺の景観は、西洋風だ」
ピー  「松は、日本の風景だものね」
    「造園もランドスケープを構成する要素なのかぁ」
    「これはもうセンスの問題だね」
パパ 「それと、派手な洋服屋の看板は、撤去すべきだよ」
    「景観が台無しになっている」
ピー  「ま、行政に言っても、取締まる条例が無いと言うだけ
    だろうね。無責任だ」
パパ 「同じなぎさ公園に武道館があるけど、いいデザインだね~」
    「日本様式の屋根と西洋風の壁面が見事に融合している」
    「実にうまい。こういう建築家も存在するんだねぇ」
ピー  「近場を見て歩くと、色々な景観が分かってくるね」
パパ 「さあーてと、行政が、ランドスケープの重要さに気付くのは
    いつごろかな~」