2009年9月11日金曜日

ピートとパパの会話(その64 秋の夜長を?)


ピー  「最近、世の中騒がしいね~」
パパ 「政権交代とかでだろう」
    「夏の喧騒が過ぎ去り、やっと落ち着きを取戻す季節
    だというのに・・・ったく」
ピー  「今年の夏はもう飛び散ったし、そろそろ実りの秋じゃ」
パパ 「では秋に合わせて、音楽の話題をやらかしまくろう」
    「秋の夜長には、ちと早いけどね」
ピー  「食べる話じゃないのかぁ」
パパ 「先日、音楽を聴いていたら、婆様がその曲は何?と聞く」
    「ヘンデルのハープ協奏曲だと言うと」
    「やっぱり形式がしっかりしている曲はエエと言いよる」
    「これには参ったね」
ピー  「婆ちゃんは、クラシックファンかな?」
パパ 「今日は、ち~と形式がしっかりしていない曲で息抜きをしよう」
    「女性ヴォーカルのエラ・フィッツジェラルドと
    ビリー・ホリディを知っちょるかい」
ピー  「ヴォーカル? パパにしてはまた珍しいね」
パパ 「そうかな~。この二人は黒人の女性ジャズ歌手で、同じような
    劣悪環境で同じように育ったが、何故か歌い方が異なっちょる」
ピー  「また考察かいな。単純に音楽として聴けば~」
パパ 「エラは、カーネギーホールで歌ってもビクともしない声域と
    声量を備えていたし、歌唱は実に軽快なリズム感を伴っていた」
    「エラが歌うTake the "A" Trainという曲を聴いてみよう」
ピー  「猛烈な勢いだね。ビフテキを喰った後のようだ」
パパ 「今度は、アニタ・オディのTake the "A" Trainを聴いてみよう」
ピー  「ほう、ジャズぽいね。でもエラの方がスウィンギーに聴こえる」
    「歌手によって曲の雰囲気が変わってくるね」
パパ 「アニタ・オディは、酒井法子の師匠でもある」
ピー  「ほんまかいな?」
パパ 「薬物中毒のね」「もう一発エラのBody and Soulという曲を聴いて
    みよう。シナトラの司会だよ」
ピー  「しっとりと歌うね~。それと声に張りがある」
    「なるほど、カーネギーホールのうるさい聴衆を前にしてもOKだ」
    「エラって、ベース奏者のレイ・ブラウンの元奥さんだよね」
パパ 「4年で別れた」
    「では、いろいろな歌手による歌唱の違いを聴いてみよう」
ピー  「違い?」
パパ 「ここでエラと同じ境遇にあったビリー・ホリディを聴こう」
    「曲は、奇妙な果実だ」
    「どうだい、ビリー・ホリデーには、場末のホールがよく似合うと
    思わないかい」
ピー  「場末?」
パパ 「滅茶苦茶汚いダミ声だが、'奇妙な果実'をとてももの悲しく歌う」
    「これは、ビリー・ホリディにしか出せない歌唱だろうね~」
ピー  「汚い声ともの悲しさが、場末に似合うんだ」
パパ 「奇妙な果実とは、ある人種差別事件のことを指している・・・」
    「続いてOne for my Baby」
ピー  「ほほう、切々と歌う独特の音色を持っているねぇ」
パパ 「そ、ブルース向きだ」
    「これをアメリカのヴィンテージアンプとスピーカーで聴くと、
    そらもう・・・言う事なし」
ピー  「ふ~~ん、先程ビリーは、エラと同じ境遇で育ったと聞いたけど、
    エラはスインギーでビリーは切々」
    「この雰囲気は、人生の途中で何かが違ったのかな~」
パパ 「分からん。エラは糖尿で両足切断のうえ失明したし、ビリーは
    薬物で昇天した」
ピー  「どちらも悲劇的だ。酒井法子は、発覚して一命を取り留めたんだ」
パパ 「もう少し歌唱の違いを聴いてみよう」
    「Tea for Twoを聴こう」
ピー  「二人でお茶を、だね」
    アニタ・オディ
    ドリス・ディ
    美空ひばり
    サラボーン
  → http://www.youtube.com/watch?v=GvBD5qZGt2Y&feature=related
パパ 「どうだったい?」
ピー  「アニタ:楽しくお茶目だ。ドリス・ディ:ポピュラー調だね。
    美空ひばり:英語の発音も良いし、実に巧いね~。でも何かコブシ
    が効いている」
パパ 「美空ひばりは、リズム感も抜群だし巧いんだけど、デクレッシェンド
    のところをクレッシェンドで歌う」
ピー  「だからジャズが演歌調になるのかぁ」
    「ヴィブラートを伸ばすところで声が太くなっちょるね」
パパ 「サラボーンはラテンのリズムだし、同じ曲でもこれだけ違う」
ピー  「なるほどね~、でも形式がしっかりしていない曲は、誰もが自由に
    歌えていいや」
パパ 「最後にデザートとして、Katica Illenyiのビヨロンを聴こう」
ピー  「Katica Illenyi? ビヨロン? 何じゃそれ」
パパ 「Katica Illenyiは、ルーマニア系ハンガリー人で女性だよ」
    「この人の名前は誰も発音できないから、日本の皆さんは現地語で
    表現している」
ピー  「カティカ・イレニィと発音するのじゃない?」
パパ 「うーん、何かおかしい発音だ」
    「ビヨロンとは、ヴァイオリンのおフランス語だよ」
ピー  「おお、上品で小粋なパリの街角の雰囲気を醸し出している」
パパ 「これは愛の悲しみ↓ 」
ピー  「なんとまぁー、ジプシー的な表現。さすがハンガリー」
    「作曲はクライスラーだね」
パパ 「この~表現は、日本人にゃー無理というもの。それにジャズも
    弾くんだよん」「どう、堪能したかい?」
ピー  「まだまだ続く秋の夜長だね」