2008年10月24日金曜日

ピートとパパの会話(その25 パパの実験農場)


パパ 「今日は、続農業の話だよ」
ピー  「どういう話なん?」
パパ 「自然農法の真似事ざんす」
    「秋、里山へ行くと、アケビや栗や柿なんかが
    実をつけているよね」
ピー  「自然の恵みだね」
パパ 「施肥を行わないのに、小さいながらも毎年実を
    つけるね」「ところが近代農業では、大量の
    化学肥料や農薬を使って、やっと収穫しているね」
    「変だと思わないかい」
ピー  「そういえば、そうだね」
パパ 「だろ、昔から何かおかしいと思っているんだ」
ピー  「最近の食物は、品種改良の結果、大量の施肥を
    必要とする性質に変わったんじゃないかい」
パパ 「おっ、鋭い洞察力」「人工的に品種改良を施すと、
    どういう訳か大量の施肥が必要になるんだな」
    「それと、病虫害にかかりやすくなるようだから、
    同じく大量の農薬が必要となる」
ピー  「ママがやっているバラが、その典型じゃん」
    「自然は、施肥と殺虫作用を、営みの中でうまく
    やっているんだね」
パパ 「そういうことだと思う。しかも循環型だ」
    「それに、自然界という所は全て混植になっている」
ピー  「人間の行う農業は、単一植生だね」
パパ 「そうなんよ、で、色々実験をやってみた訳だ」
    「取りあえず無施肥の実験をね」
ピー  「何を植えたの」
パパ 「果実類を色々とね。先ず柿、これは難しい」
    「毎年黒点病が発生するし、収穫も年々低下していく」
ピー  「でも、里山の柿は、毎年多く結実しているよ」
パパ 「そこなんだ、何もしない自然の方が多収穫なんだな」
    「施肥も剪定もしないのに。 その違いに疑問を感じる」
    「結局パパの柿は、品種改良されたおお喰いの性質
    らしいから、施肥と剪定を必要とするんだな」
ピー  「自然の営みの方は、どういうメカニズムなんだろうね」
    「柿の他には?」
パパ 「柑橘類のミカンね」
    「これは放ってあるけど、年々収穫が増えてくるよ」
    「ただし、日当たりを良くしておかないと収穫が減る」
    「それと、夏に雨が少ないと中身がスポンジ状になって
    果肉が入らないようだ。八朔は、特にそうだ」
ピー  「そんなことが起こるのかぁ。何か微妙で難しそう」
    「施肥はしないの?」
パパ 「全くしていない。自然のままだよ。金柑もそうだ」
    「問題は柚子だね」
    「毎年必ず収穫をしておかないと、翌年の実生は数個に
    激減する」
ピー  「いわゆる隔年結果となるんだね」
パパ 「それに柚子は、すす病が出て黒ずんでしまうね」
    「とても人にあげられる状態ではないよ」
ピー  「という事は、市販の柚子は大量の農薬で汚染されている?」
パパ 「そらもう市販品は、何から何まで農薬漬だということが、
    実際に作ってみると分かるんだな」
ピー  「恐ろしや」「他には?」
パパ 「ブルーベリーは、簡単に収穫できて病虫害の発生もないね」
    「こやつは2本植えておかないと、結実が難しいらしいよ」
ピー  「自花受粉をしないのかな」
パパ 「ブルーベリーのコツは、酸性土壌に植えることだね」
    「パパは、スギナが生えていた所に植えたよ」
    「スギナは、酸性土壌によく育つから、土壌のPhを
    見分ける際の指標植物となる」
    「それと、乾燥に弱いから水やりを欠かせないね」
ピー  「パパのブルーベリーは、ホームセンターで買ったの?」
パパ 「いや、農水省の研究農園の苗だ。一般にはないよ」
ピー  「え~?、なぜパパんちにそんなのがあるんよ?」
パパ 「ヘヘ、農水省の博士から特別に提供して貰ったのさ」
    「彼は、昔から知っているキャリア官僚だ」
ピー  「いろんな人をよく知っているね」
パパ 「彼が言っていたけど、研究農園でトマトを栽培すると、
    研究者よりも手伝いのお百姓さんが作るトマトの方が
    大きく育つんだって」
ピー  「やはり農業には、実践的なノウハウがあるんだ」
    「他には?」
パパ 「栗も無農薬・無施肥でやっているが、問題あるね」
ピー  「ほう、何が?」
パパ 「市販の苗木を買って植えたんだが、接木なんだよね」
    「実際、数年間は大きな実が生るんだけど、ある時期から
    ウィルス病が出て枝葉がヘンチクリンな格好になる」
    「それ以降、成長が止まっているように見えるね」
ピー  「人口的に品種改良がされていて、病虫害に弱いんだね」
パパ 「で、ある時、風で接木の部分から先が折れたんだ」
    「ところが、台木から芽を吹いて実がなるようになった」
ピー  「オー、いいじゃん」
パパ 「ほんでもって、台木の性質がもろに出てきて、
    実生は小さいんだけど、病虫害に強いんだな~、これが」
    「ウィルスなんか、への河童なんだよ」
    「剪定しないと、枝葉の広がりで他を圧倒してしまう」
ピー  「俗に言う先祖帰りだね」
パパ 「結局、品種改良されたものは、農薬に頼らざるを得ない」
    「市販の栗や観光農園の栗も、max農薬漬だ!」
ピー  「う~ん、自然生育と人口育苗の差を実証できたじゃんか」
パパ 「パパがやっていることは遊びなんだけど、自然がどう
    関わっているのかに興味を惹かれるね」
    「手間隙を考えると買った方が安い場合もあるが、何も
    しなくて実をつけると儲け物だな」
ピー  「自然からの収奪だ」「縄文時代の採集経済の実験だね」
パパ 「自然農法は、コスト面からすると面白い研究テーマだと
    思うよ」
    「但し、化学肥料会社や農薬会社は成立たなくなる」
ピー  「それは困るね。方法はないの?」
パパ 「無くはない。特に農機具メーカーとはね」
ピー  「紹介してよ」
パパ 「NHKの教育放送で、人生の歩き方という番組を
    放送しているんだけど、そのなかで岩澤信夫氏の
    不耕起農法の特集をしていたんだ」
ピー  「面白い放送だったの」
パパ 「前回、福岡正信氏の自然農法について、少し話をしたよね」
ピー  「パパは、福岡氏のことを原始共産主義者だと言って
    いたね」
パパ 「そう、彼は、企業というのは全て悪だと考えている」
    「これは、コミュニストの考え方だね」
ピー  「というか、一種の理想主義者じゃないの」
パパ 「彼は、哲学とか何とか言うんだけど、根本的な部分で非常に
    観念的な考え方に支配されているじゃないかなぁ」
    「国民皆農主義で、人々を農村に閉じ込めてしまうんだ」
    「これは、宮沢賢治の考え方と共通してるね」
ピー  「世の中の現実や進歩と乖離している?」
パパ 「まぁね」「一方岩澤氏は、農業をビジネスとして成立させないと、
    後継者が育たないと解説している」
ピー  「ちゅーことは、福岡氏の自然農法と根本的に異なる
    ということ?」
パパ 「技術上の根本は同じだ」「現実を直視するか否かだね」
    「福岡氏の自然農法は、数千万人が飢え死にする」
    「とにかく’企業は悪’と考えているんだから」
ピー  「パパが、’その18’で話した内容だね」
パパ 「その点、岩澤氏の不耕起栽培の技術は、結果として
    自然農法に結びついたんだな」
    「しかも、農機具メーカーと共同で、田植え機の開発を
    行ったりもしている」
ピー  「共存共栄だね」
パパ 「この話は長くなるから、日本放送出版協会から出ている
    ’NHK知るを楽しむ 人生の歩き方 8月・9月分’を
    読むと良く分かるよ。一般書店にも置いてある」
ピー  「次回はなに?」
パパ 「田舎暮らしの話なんかどうだい」