2010年1月7日木曜日

ピートとパパの会話(その75 New Year Concert)



ピー  「2010年が明けましたね~」
パパ 「新春恒例ウィーンフィルのNew Year Concertを 楽しんだかい?」
ピー  「ウィーンフィルの新年演奏会って、そんなにエエもんなん」
パパ 「これが無いと新年が明けないという人もいるね」
ピー  「何を演奏するの?」
パパ 「大抵は、シュトラウス一族が作曲した曲を演奏する」
ピー  「なんや、ただそれだけのことか」
    「なんでそないなもんに世界は大騒ぎするのさ?」
パパ 「そらもう、600年以上欧州に君臨したハプスブルグ家の
    宮廷文化が花開いたウィーンの地で開催されるからさ」
ピー  「ほう、民は宮廷文化ちゅーもんに弱いと見えるのぉ」
パパ 「実際は興行収入が目的なんだ」「基幹産業が無く、観光収入
    に頼っているオーストリアだからねぇ」
    「で、毎回演奏されるのがヨハン・シュトラウスのオペレッタ
    こうもり とか美しき青きドナウとかラデツキー行進曲だ」
ピー  「ほう、どんなオペレッタなん?」
パパ 「仮面舞踏会を題材にした男女の痴話話だよ」
ピー  「あ~、仮面舞踏会って真央ちゃんのフィギュア曲だ」
パパ 「それはハチャトリヤンの曲だよ」
ピー  「へ? 別の曲か。そもそも仮面舞踏会というのは何なん?」
パパ 「仮面で顔を隠した男女が踊る会だ」
    「起源は14世紀頃らしく、舞踏会での余興が始まりだとか」
ピー  「ほ? 何でまた仮面? 誰と踊っているのか分からんじゃん」
パパ 「だから人気があったのじゃよ」
    「ま、当時の上流社会の"出会い系"だ」
ピー  「にゃに! な~にか不純な感じがするなぁ」
    「こういうことは、今も昔も変わらんのぉ」
パパ 「んで、ハプスブルグ家を継承するマリア・テレジアが、
    神聖ローマ帝国の風紀が乱れるというので禁止令を出した」
ピー  「マリア・テレジア?」
パパ 「フランス革命に散ったマリー・アントワネットのおっ母だよ」
    「このおっ母は、ハプスブルグ家には珍しい恋愛結婚じゃった」
    「大抵は、ハプスブルグ家伝統の政略結婚なんだけどね」
    「実は、政略結婚がハプスブルグ家繁栄の秘密なのじゃよ」
ピー  「ふ~ん」
パパ 「さて、New Year Concertの話に戻ろう」
    「以前、ピートの兄ちゃんがチケットを申し込んだらしいぞ」
ピー  「ウィーンフィルのNew Year Concertかい?」
パパ 「そうだよん。こんなの当ったら大変だよ」
    「チケット代金だけで4万円とか60万円とか言われている」
ピー  「どえらい差があるじゃん」
パパ 「実際は幾らするのか当選して見ないと分からん」
ピー  「相場物だね。危なくて手を出せないなぁ」
パパ 「現地で買ったら25万円くらいだとか、もうダフ屋の世界だよ」
    「ニセ物だったり、騙されたりとかさ~」
ピー  「何故、そないなことになるの?」
パパ 「ウィーン楽友協会がチケットの販権を握っているから、先ず
    知合いからってことになる」
ピー  「すると、そのお余りが回ってくるという寸法か」
パパ 「そのようだね。特に日本人は、ぼられるんだな~」
    「旅行会社のツアーでは、数年前に110万円くらい、去年は140万円、
    今年は180万円での募集じゃった。チケット込みでね」
ピー  「ガォー、一人分でかい?」
パパ 「そうだよん、1週間ほどの観光を含めてだけどね。飛行機は
    ビジネスクラスだ」「一家4人で行くと720万円だね」
ピー  「なんやかんやで1000万円だー。一体どなた様が行くの?」
パパ 「日本から行く人は何人もいるよ。毎年チケットが足らない」
ピー  「ふ~、おいらには無理だなぁ」
パパ 「だから、NHKの衛星配信で我慢しておるのよん」
    「演奏会は、ウィーン楽友協会のグローサーザール(大ホール)で
    行われるんだ」「絢爛豪華で見事なホールだよ↓」

ピー  「パパがよく言う酒造メーカーのホールとはドエライ違いだねぇ」
パパ 「日本のベニヤ張りのホールとは格が全く違う。歴史が違う」
    「なんたって音楽の都、ウィーンだからね」
    「このコンサートホールは、フランツ・ヨーゼフ1世がパトロンとなり、
    1870年に建築された」
    「これが楽友協会(ムジークフェラインザール)全体の写真だよ↓」

ピー  「昔、パパが行ったというミラノのスカラ座と比べてどう?」
パパ 「う~ん、ムジークフェラインザールの方が格調高い感じがする」
    「建築は、ネオ・バロック様式だ」
ピー  「バロック様式ってよく聞くけど、どんな様式?」
パパ 「こういうのはピートの兄ちゃんが専門だけど、パパが思うに
    バロックちゅーのは成金様式だね」
ピー  「成金?」
パパ 「ほら、一儲けした人がよく建てる金満御殿だよ」
ピー  「あ~、田舎に建っている成金趣味の金ピカ御殿か~」
パパ 「ま、それは冗談として、バロック様式というのは、華麗な装飾を
    施した家具を建物にしたようなもので、絢爛豪華さを基調とする」
    「絶対王政時代に始まり、その権勢を誇示するための様式だ」
ピー  「ここで先程の曲を演奏するんだね」
パパ 「ウィーンフィルは、楽友協会の大ホールの残響に合わせた演奏を
    するんだ。特に弦楽器は、音と音の区切りを明瞭にするような
    奏法をとる」
ピー  「明瞭って、どのようにするのかなぁ?」
パパ 「多分、スタッカートやアクセントのような演奏技法を使って
    音の表情というか、その余韻を短くするんだろうね」
ピー  「すると心地よく聴こえるのかな?」
パパ 「音がホールの残響で不明瞭な響きになるのを抑えるのさ」
    「つまり、グローサーザールの残響は長いんだ」
ピー  「音の切れが良くなるんだね」
    「ホールに合わせた演奏をするなんて、恐れ入ったね」
パパ 「それはもう、世界に冠たるウィーンフィルだからね」
    「また、ウィーンフィルの標準音高は445ヘルツとやや高い」
    「これも音の響きを良くしているらしい」
ピー  「下の写真が演奏風景だね」

パパ 「この中に和服姿の日本女性が見えるかな~」
    「毎年顔を出すのが、元SONY会長の大賀氏だ」
ピー  「ほう」
パパ 「大賀氏は経営者でありながら、東京芸大出身のバリトン歌手、
    指揮者、ジェット機の操縦士、電子回路にも造詣が深いという
    顔を持つ」
ピー  「怪人二十面相だな。でもよく知っているね~」
パパ 「以前、大賀氏が寄稿した電子回路論を読んだことがあるからさ」
    「このウィーンで開催されるNew Year Concertには、多くの企業が
    パトロンとして関わっている。SONYもそうかも知れない」
ピー  「ウィーンでのNew Year Concertは何時頃から始まったのさ」
パパ 「今のような形になったのは1939年だね」
ピー  「遅いんだね。でも何故シュトラウスなの?」
パパ 「1873年のウィーンフィルとヨハン・シュトラウスとの出会いが
    始まりだと言われている」
ピー  「ん?、そのころは神聖ローマ帝国の衰退期じゃなかった?」
パパ 「帝国の衰退とは逆に、文化は隆盛を極めていたんだ」
    「歴代皇帝の文化に対する投資が花開いてきたんだよ」
ピー  「その時の宮廷音楽の中心的存在が、ヨハン・シュトラウスって
    訳だね」
パパ 「他にマーラー、ブルックナー、ブラームス、シェーンベルクと
    いった作曲家が有名だね」
ピー  「宮廷舞踏会ではワルツが演奏されたんだろ?」
パパ 「そうだよ~、New Year Concertでもシェーンブルン宮殿から
    バレーをTV中継したりもする」
    「今年はウィーン美術史美術館からの中継だった↓」

パパ 「バレーのコスチュームは、Valentinoのデザインだよ」
    「それに、New Year Concertでは、3万本の花をイタリアから
    取り寄せたりもする」
ピー  「おっほ~、なるほど世界最高のコンサートでもあるな~」
    「チケットに何十万円も出す値打ちがあるというものだねぇ」
パパ 「ピートも是非どうぞ!」