2010年3月14日日曜日

ピートとパパの会話(その89 教育と先生の組合Ⅱ)


パパ 「今日は、先ずこれから聴いて見よう。歌詞の翻訳付きだよ」http://www.youtube.com/watch?v=ELUfqABU2Ew&feature=related
ピー  「これ、フランス国歌?」
パパ 「そうだよ~ん。ラ・マルセイエーズだ」
ピー  「なんという暴力的な歌詞であることよ」
    「国旗は散髪屋さんの看板のようだし」
パパ 「フランス革命時の歌が、そのまま国歌になったのじゃよ」
    「だから血生臭い」
(君が代)
ピー  「おう、雅でおおらかだね~。おいらはこちらの方がいいや」
パパ 「ほんじゃ、これはどうだい?」
http://www.youtube.com/watch?v=NzJ2NKp23WU
ピー  「おや、出だしがラ・マルセイエーズじゃんか。旋律がマイルドに
    なったね~」
パパ 「と、言う事で前回の続きをやろう」
ピー  「結局、先生の組合は、軍国主義教育の反省から、教育の国家統制
    を嫌がると言う事だったね」
パパ 「国家が反動の道を選ぶのなら、その考え方は正しいと思うがね」
ピー  「要は、近代デモクラシーの精神が教育に生かされているかどうか
    だろう?」
パパ 「じゃが、先生の組合は、イデオロギーに忠実ときたもんだ」
ピー  「どうして忠実なん?」
パパ 「これはもう、初代委員長がマルクス主義者だったからね~」
    「その教えが先生の組合に受け継がれているのさ」
    「でも、全ての先生がそうではないらしいが・・・」
ピー  「じゃ、一部の先生は、学校でマルクス主義教育をしているの?」
パパ 「そこが問題なのじゃよ。教育の中立性に欠ける」
    「ま、マルクス主義教育をしているとは思わないが・・・」
ピー  「おいらは、普通の先生に教えて貰いたいなぁ」
    「ほんで、前回話していた先生の階級闘争って何のこと?」
パパ 「それは、先生の権利主張に深く関係してくるんだなぁ」
ピー  「ん?」
パパ 「資本主義社会には、金持ちと貧乏人がいるというのが話の前提」
    「金持ちは資本家で、貧乏人は労働者という設定だ」
ピー  「何か演劇の役どころみたいだね」
パパ 「マルクスは、この資本家対労働者の関係を階級という概念で定義
    づけ、資本家が何故儲かるのかを数式で説明した」
    「んで、両者の間には必然的に対立関係が生じ、それが革命に発展
    すると仮定した」「唯物論と弁証法の連携解釈だ」
ピー  「コラボレーション? 抽象的でさっぱり解らん」
パパ 「ワシもわーらん。要は、人間の経済行動は全て数式で定義できる
    と言っちょるらしい」「それと歴史は変化するのが必然だと」
ピー  「人間の精神行動も、数学や物理学で証明できると??」
パパ 「そうだ、だから弁証法は、革命の代数学と言われちょるし、その
    概念を取り入れたマルクス主義を科学的社会主義と呼んじょる」
ピー  「訳が解らんけど、階級とか対立とか、何か喧嘩腰だねぇ」
パパ 「マルクスは、労働者が貧乏なのは資本家による搾取が原因だと
    言い、更に革命家レーニンは、貧乏を無くすには革命による
    権力奪取が必要だと焚き付けちょる」
ピー  「ほんまかいな~? 何か変な気がするなぁ」
パパ 「それで先生の組合も、かつての帝国主義による軍国教育の反省
    から、全ての教育闘争を階級闘争と位置づける事にしたのさ」
ピー  「う~ん、資本主義→帝国主義・軍国主義→階級闘争という構図
    だね」「資本主義=悪、みたいな表現じゃんか~」
パパ 「彼の国のプロパガンダがそうなのじゃよ」
    「そのプロパガンダを信じるか否かは、社会的な客観性で判断
    すればよろしい」
ピー  「階級闘争を説明するのに、そんな訳が解らん事から入らんと
    あかんのかいな?」
パパ 「じゃけん、階級闘争を煽動するのは、労働者ではなく理論のみ
    に魅せられた非労働者階級なのじゃよ」
ピー  「それで、階級闘争と教育が何故関係するのか、おいらには
    さっぱりわーらんね」
パパ 「先生も労働者だという認識をすれば、解るかも知れない」
ピー  「そうか~、マルクスは資本家と労働者という二つの階級しか
    示していないんだ」「で、権力は資本家階級に掌握されている」
    「先生の立場は、労働者階級に属するという認識だね」
    「だから、教育の国家統制を排除するには、階級闘争を通して
    資本家階級を打倒する必要があると言う事かいな?」
パパ 「そうだよ~ん」「軍国主義体制下、先生という職業は聖職だとされ
    たから、労働者としての権利を主張することが困難だった」
    「ま、その時代の反動から階級闘争に向かったということもある
    かも知れない」
ピー  「でも、労働の多様性がある現代社会で、なぜ労使の対立を煽るの
    かなぁ」「労使協調ってこともあるじゃん」
    「マルクスの社会観や労働観は、0か1かのディジタル表現だね~」
パパ 「面白い事を言うねぇ」
    「でも、教師は労働者であるという立場から、その当然の権利を
    勝取るちゅーのが、先生の組合の主張でありまんねん」
    「ストライキ権とかさ」
ピー  「それで先生の組合は、政治闘争をするのか~」
    「そこんとこが、前回の権利の主張という部分なんだね~」
パパ 「これが、前回の話を含め、組合発足当時の思想的背景だよ」
ピー  「しっかし、先生の組合が考える階級闘争と教育は直接関係ないと、
    おいらは感じるけどね~」
パパ 「先生の組合は、自分達を単なる労働者と認識したことで、民主
    教育やその中立性を如何に守るかということよりも、階級闘争が
    主になってしまったのさ」「つまり、闘争が左傾化し、当時の
    社会党と政治的に結びついてしまった」
ピー  「参ったなぁ」「そこから国旗掲揚反対や君が代斉唱反対へと
    結びついて行くのかぁ」
パパ 「では、教育と階級闘争の矛盾を、ちぃっとだけ考察して見よう」
    「あのね、マルクスの労働価値説というのがあって、それは労働と
    剰余労働という二つの基本概念で構成されているんだ」
ピー  「難しそうだな~。それが何を意味するのか知らん?」
パパ 「難しい事は学者に任すとして、簡単に言えば、物を生産する時に
    は、原価としての労働と利潤を生み出す労働の二種類が同時に
    存在すると、マルクスは言っているんだ」
ピー  「利潤を生み出す労働とは、儲けの部分を指すのだね」
パパ 「そうそう、この儲けの部分は、労働者が生み出したにも係わらず、
    資本家が全部取ってしまうと言うのが、労働価値説の中身だ」
    「マルクスは、この取られた部分を剰余価値と名付けた」
ピー  「解った、その取られたことを指して、搾取と呼ぶんだね」
パパ 「で、この取られたものを取り返す方法が、革命による権力奪取だと
    言う訳さ」
ピー  「今の日本じゃ、非現実的な物語にしか聞えんよ」
    「日本は、議会制民主主義の国だよ。権力奪取って暴力革命だろう」
パパ 「そこでだ、先生の労働をこの労働価値説の関係式で考えると、
    生徒は先生の労働によって生み出された生産物と定義できる」
    「じゃ、教育に於ける剰余価値って、一体何なの?と言う事になる」
ピー  「先生の労働は、マルクスの労働価値説では説明出来ないのかぁ」
    「先生の組合が、教師も労働者であると言って、民間労働者と同じ
    ような闘争を行うのは考え物だねぇ」
パパ 「マルクスの労働価値説は、剰余価値が生まれる事が絶対条件だ」
    「でないと、階級闘争も革命もあり得ない話になる」
ピー  「教育の剰余価値って、数式では説明出来ないのかぁ」
パパ 「マルキストは、そこを誤魔化して、先生の組合を階級闘争に
    引きずり込んだ、とパパには思える」
ピー  「ますます教育と階級闘争は別物だと思えるなぁ」
パパ 「教職労働と言うのは、生産物を対象とするような労働概念ではなく、
    もっと人間的な概念で説明されないとね」
ピー  「そうか、人間の教育を行うんだから、労働を商品と看做すような
    マルクス思想を前提とした労働観には、疑問が生じると言う事か」
    「ということは・・・、聖職と看做した方が中立性を保てる?」
パパ 「先生の組合は、労働価値説で教職労働を定義付けようとするから、
    階級闘争をやらざるを得なくなる」
    「大体やね~、マルクスとかレーニンとかって、産業革命当時の
    資本家と労働者の関係を論じている前世紀の思想家と革命家だ」
ピー  「何故先生の組合は、そんな古臭い非現実的な思想に傾倒するのよ」
パパ 「先生の労働環境は、社会から隔絶されたような状況だからねぇ」
    「世の中の変化が見えないというか、だから組合発足当時の思想の
    ままで居られるんだ」「思想的に純粋培養されるんだな~」
ピー  「先生の組合も、社会の変化に合わせた改革が必要だね」
パパ 「それに、公務員としての身分が保障された上での闘争を展開して
    いるからねぇ。何ともはや」
ピー  「民間組合では、そうはいかんわね」
    「先生の組合も、反軍国主義の立場から教育の国家統制に異議を
    唱えるのなら理解できるけど、イデオロギーの立場からではね~」
パパ 「しかし、最近は闘争もマイルドになってきたらしいよ」
    「文部科学省と和解したとかしないとか・・・」
ピー  「パパは社会主義が嫌いなん?」
パパ 「革命を起こした社会主義国は貧しいままだ。好き嫌いではないよ」
    「レニングラード音楽院に留学していた前橋汀子は、ソ連で落ち
    こぼれると食べて行けないと語っていた」
    「成熟した資本主義社会は、まだ最低限の社会保障がある」
ピー  「うん? 先程の剰余価値が、革命によって労働者の手に戻るの
    だから、社会主義は豊かになって行く筈じゃなかった?」
パパ 「社会主義では、豊かになる剰余価値が経済学上生み出せないんだ」
    「そもそも社会主義経済は、剰余価値なんて概念が存在しない」
    「資本主義は、経済学上剰余価値を生み出せるから、それを労使で
    分け合えばいい」「それが社会保障の財源にもなる」
ピー  「つまりこうかい、マルクス経済学は、資本主義の経済構造を分析
    したのであって、社会主義での剰余価値には言及していないと?」
パパ 「こじつければ、そう言う事ではないかと。だから社会主義国は、
    財源を生み出せなくて、内に向かって崩壊しちまった」
ピー  「先生の組合は、早くイデオロギーから卒業して貰いたいものだ」
    「しかしまあ、年中よくそんなことばかり考えているね~」
パパ 「ほほ、趣味じゃけん」
    「では、先生の組合にこの曲を贈ることにしよう」
    「The Beatles Revolution」
ピー  「革命? 嫌味だな~・・・ヒヒ」