パパ 「今日は、ピート達の話題だよ」
ピー 「おいら達の話題?」
パパ 「そう、犬連れ登山についてだよ」
ピー 「おいらの最高登攀は、1643mの飯盛山だよ」
「ガレ場も随分登ったよ」
パパ 「でもね、犬連れ登山に猛反対している人がいるんだ」
「その反対の仕方がさ、容認派の人を攻撃的に罵倒
しているんだな」
「Googleで‘犬連れ登山’と検索すれば、一番に出てくるよ」
「山の案内や山岳写真を生業としている人らしい」
ピー 「どんな内容なん?」
パパ 「レトの雑誌でお馴染みの、シェルパ斉藤という人が
いるだろう」「彼のことをバカという表現をしているね」
ピー 「何よそれ」「ネットという公の場でだろう」
「名誉毀損じゃないの」
「パパは、検察審査委員をしていたと言っていたね」
「こういう事案は、どーざんすか?」
パパ 「検察側が、不起訴相当と結論を出した場合、不服があれば
検察審査会に判断を仰ぐことになるね」
「それにしても、異様なほど反対するんだな、この人」
ピー 「おいら達が登山することへの反対理由は何よ?」
パパ 「生態系への影響だとさ」
「家庭犬は、未知のウィルスを持っている可能性があるから、
野生動物を絶滅さすようなことが起こるちゅーんだよ」
ピー 「だって~、おいら達は、色んな予防注射もしているし、
健康診断でウィルスチェックもしているよ」
「逆だと思うね。北きつね君のエキノコックスの例もあるしさ」
「おいら達には考えられないな~」
パパ 「そう、ピート達家庭犬の方が、野生動物より遥かに
衛生的だと思うんだけどね~」
「それに元々動物達は、野生・家庭の区別なんかなくて、
自然界で普通に行き来していたと思うよ。人類・猿人も含めてね」
ピー 「昔のネアンデルタール人とかクロマニヨン人だろう」
「古くは、北京原人にジャワ原人。はは、面白いね」
「パパの先祖は、どの原人?」
パパ 「パパはね、その昔、モンゴルから移動して来たんだよ」
ピー 「移動すること事態、生態系の破壊だよ」
「大体ね、登山ブームか何か知らないけど、大勢で山へ入って
人間が一番の自然破壊者だよ」
「この人が、本当に自然を守ろうと思うなら、山の紹介なんか
しちゃーいけないんだよね!」
「山を愛するとか、自然を守ろうとか言っているけど、
本を書いて紹介するなんぞは、単なる観光業者じゃんか」
パパ 「そうなんだけどね~、何を言ってもムキになるんだ」
「本人は、犬が嫌いな訳ではない、と言うんだけどね」
「でも、何が何でも犬連れ登山は絶対反対なんだ。この人は」
ピー 「ふ~ん、何か屈折している感じだね」
パパ 「ま、理解できる内容もあるんだけれど、感情的な異様さを
感じるんだなぁ」
ピー 「困りましたな~、それは」「おいらは、山で会いたくないな」
パパ 「でだ、パパは色々考えたんだな~、この異様さの本質を」
「これは、ピート達の問題ではなくて、彼の宗教観だという
結論に達した」
「ただ彼は、自分でこのことに気が付いていないんだなぁ」
ピー 「宗教観! パパにしては珍しい概念を持ち出すね」
パパ 「彼は山岳家なんだよ。つまり、山は神聖な領域なんだな」
「元からそこに棲息する動物や植物は、彼にとっては聖なる
ものなんだよ」「それ以外の人間が持ち込む動植物は、
彼にとっては汚(けが)れたものなんだなぁ」
ピー 「山岳密教の自然観じゃんかー」「山伏だね」
パパ 「しかしだ、彼は猟犬が入山することには寛容なんだな」
「猟犬は、数が少ないから問題が起こらないというんだが」
「それとて、彼が言う未知のウィルスを持ち込む可能性は
排除できないよ」「動物を追い回して、諸に接触するんだよ~」
ピー 「山猟は、古来から神聖なものとして認識されるから、猟犬の
入山については寛容になれるんだね。マタギの世界だ」
パパ 「そう、山の猟は神聖なんだ」
「ちょっと横道にそれるけど・・・パパはね、富士山にリフトか
ロープウェイをつけろと言っているんだ」
「そうすれば、老若男女誰もが日本一の山に登頂できる」
「すげー観光収入にもなるよ」「頂上の土産物屋も大繁盛だ」
「しかし、この案には皆さん反対するんだなぁ」
ピー 「富士山にリフト~、そりゃ駄目だ」
「富士山は霊峰だよ」
パパ 「そこだよ! 彼にとって全ての山は霊峰なんだ」
「そこに家庭犬が入り込むというのは、考えられないんだよ」
「犬は嫌いじゃないって言ってるけど、やはり犬に対して
偏見を持っているよ」
「ファミリーとして認識できないんだ」
ピー 「なるほどね~、根底に無意識の宗教観があるとなると、
何を言っても聞く耳持たないだろうね」
パパ 「彼が、そのことに気付けばいいんだけどね~」
「そこで、対策だ」
ピー 「ま~た、変なことを言い出すんだろう?」
パパ 「ま、常識人には変なことだが・・・」
「要は、この人の宗教観を満足させればいいんだよ」
「で、ピートが首にしめ縄と紙垂(しで)をつけて登るんだ」
「さすれば、山中で誰かに出会っても、何かの奉納だと思う」
ピー 「何それ、おいら笑っちゃうよ」
パパ 「笑っちゃいけない、神聖な犬になったんだから」
ピー 「何が何でも反対の人に遇えばどう言うのさ」
パパ 「麓の権宮司に頼まれて、霊峰の頂上にて玉串奉奠の儀を
執り行うのであ~る、と言えばエエねん」
「ピートは、こま犬のふりをすればよろしい」
「相手が神様では、誰も文句を言えない」
ピー 「厄払いに登ると言えばいいんだね」
「おいら、神社のこま犬かい」
「でも、こま犬のルーツは、古代オリエントの獅子だよ~」
パパ 「ま、これは冗談だとしてさ、
次回は、殆ど誰も気付かない自然の話をしよう」
「ダムと自然の不思議、それと植物の植生環境について
若干の考察をしてみよう」