2008年11月14日金曜日

ピートとパパの会話(その32 犬連れ登山)


パパ 「今日は、ピート達の話題だよ」
ピー  「おいら達の話題?」
パパ 「そう、犬連れ登山についてだよ」
ピー  「おいらの最高登攀は、1643mの飯盛山だよ」
    「ガレ場も随分登ったよ」
パパ 「でもね、犬連れ登山に猛反対している人がいるんだ」
    「その反対の仕方がさ、容認派の人を攻撃的に罵倒
    しているんだな」
    「Googleで‘犬連れ登山’と検索すれば、一番に出てくるよ」
    「山の案内や山岳写真を生業としている人らしい」
ピー  「どんな内容なん?」
パパ 「レトの雑誌でお馴染みの、シェルパ斉藤という人が
    いるだろう」「彼のことをバカという表現をしているね」
ピー  「何よそれ」「ネットという公の場でだろう」
    「名誉毀損じゃないの」
    「パパは、検察審査委員をしていたと言っていたね」
    「こういう事案は、どーざんすか?」
パパ 「検察側が、不起訴相当と結論を出した場合、不服があれば
    検察審査会に判断を仰ぐことになるね」
    「それにしても、異様なほど反対するんだな、この人」
ピー  「おいら達が登山することへの反対理由は何よ?」
パパ 「生態系への影響だとさ」
    「家庭犬は、未知のウィルスを持っている可能性があるから、
    野生動物を絶滅さすようなことが起こるちゅーんだよ」
ピー  「だって~、おいら達は、色んな予防注射もしているし、
    健康診断でウィルスチェックもしているよ」
    「逆だと思うね。北きつね君のエキノコックスの例もあるしさ」
    「おいら達には考えられないな~」
パパ 「そう、ピート達家庭犬の方が、野生動物より遥かに
    衛生的だと思うんだけどね~」
    「それに元々動物達は、野生・家庭の区別なんかなくて、
    自然界で普通に行き来していたと思うよ。人類・猿人も含めてね」
ピー  「昔のネアンデルタール人とかクロマニヨン人だろう」
    「古くは、北京原人にジャワ原人。はは、面白いね」
    「パパの先祖は、どの原人?」
パパ 「パパはね、その昔、モンゴルから移動して来たんだよ」
ピー  「移動すること事態、生態系の破壊だよ」
    「大体ね、登山ブームか何か知らないけど、大勢で山へ入って
    人間が一番の自然破壊者だよ」
    「この人が、本当に自然を守ろうと思うなら、山の紹介なんか
    しちゃーいけないんだよね!」
    「山を愛するとか、自然を守ろうとか言っているけど、
    本を書いて紹介するなんぞは、単なる観光業者じゃんか」
パパ 「そうなんだけどね~、何を言ってもムキになるんだ」
    「本人は、犬が嫌いな訳ではない、と言うんだけどね」
    「でも、何が何でも犬連れ登山は絶対反対なんだ。この人は」
ピー  「ふ~ん、何か屈折している感じだね」
パパ 「ま、理解できる内容もあるんだけれど、感情的な異様さを
    感じるんだなぁ」
ピー  「困りましたな~、それは」「おいらは、山で会いたくないな」
パパ 「でだ、パパは色々考えたんだな~、この異様さの本質を」
    「これは、ピート達の問題ではなくて、彼の宗教観だという
    結論に達した」
    「ただ彼は、自分でこのことに気が付いていないんだなぁ」
ピー  「宗教観! パパにしては珍しい概念を持ち出すね」
パパ 「彼は山岳家なんだよ。つまり、山は神聖な領域なんだな」
    「元からそこに棲息する動物や植物は、彼にとっては聖なる
    ものなんだよ」「それ以外の人間が持ち込む動植物は、
    彼にとっては汚(けが)れたものなんだなぁ」
ピー  「山岳密教の自然観じゃんかー」「山伏だね」
パパ 「しかしだ、彼は猟犬が入山することには寛容なんだな」
    「猟犬は、数が少ないから問題が起こらないというんだが」
    「それとて、彼が言う未知のウィルスを持ち込む可能性は
    排除できないよ」「動物を追い回して、諸に接触するんだよ~」
ピー  「山猟は、古来から神聖なものとして認識されるから、猟犬の
    入山については寛容になれるんだね。マタギの世界だ」
パパ 「そう、山の猟は神聖なんだ」
    「ちょっと横道にそれるけど・・・パパはね、富士山にリフトか
    ロープウェイをつけろと言っているんだ」
    「そうすれば、老若男女誰もが日本一の山に登頂できる」
    「すげー観光収入にもなるよ」「頂上の土産物屋も大繁盛だ」
    「しかし、この案には皆さん反対するんだなぁ」
ピー  「富士山にリフト~、そりゃ駄目だ」
    「富士山は霊峰だよ」
パパ 「そこだよ! 彼にとって全ての山は霊峰なんだ」
    「そこに家庭犬が入り込むというのは、考えられないんだよ」
    「犬は嫌いじゃないって言ってるけど、やはり犬に対して
    偏見を持っているよ」
    「ファミリーとして認識できないんだ」
ピー  「なるほどね~、根底に無意識の宗教観があるとなると、
    何を言っても聞く耳持たないだろうね」
パパ 「彼が、そのことに気付けばいいんだけどね~」
    「そこで、対策だ」
ピー  「ま~た、変なことを言い出すんだろう?」
パパ 「ま、常識人には変なことだが・・・」
    「要は、この人の宗教観を満足させればいいんだよ」
    「で、ピートが首にしめ縄と紙垂(しで)をつけて登るんだ」
    「さすれば、山中で誰かに出会っても、何かの奉納だと思う」
ピー  「何それ、おいら笑っちゃうよ」
パパ 「笑っちゃいけない、神聖な犬になったんだから」
ピー  「何が何でも反対の人に遇えばどう言うのさ」
パパ 「麓の権宮司に頼まれて、霊峰の頂上にて玉串奉奠の儀を
    執り行うのであ~る、と言えばエエねん」
    「ピートは、こま犬のふりをすればよろしい」
    「相手が神様では、誰も文句を言えない」
ピー  「厄払いに登ると言えばいいんだね」
    「おいら、神社のこま犬かい」
    「でも、こま犬のルーツは、古代オリエントの獅子だよ~」
パパ 「ま、これは冗談だとしてさ、
    次回は、殆ど誰も気付かない自然の話をしよう」
    「ダムと自然の不思議、それと植物の植生環境について
    若干の考察をしてみよう」