パパ 「今日は、植物の生態系について語ろう」
ピー 「地球規模の生態系かな」
パパ 「いや、何処にでもある庭の植物の盛衰についてだよ」
「庭に何も手を加えずにいると、どうなると思う?」
ピー 「雑草だらけになってお仕舞い!」
パパ 「そう言って終わっちゃうだろう。よく観察しなきゃ」
「先ずさ、宅地開発された土地に一戸建てを建てたとしよう」
「庭は、ガレ場状態で植物なし」
「さーて、最初に根を下ろす植物は何かな~?」
ピー 「草じゃんか」
パパ 「殺風景な表現だね~」
「草もそうだけど、先ず最初にタラの木が芽を出す」
ピー 「あのテンプラにするタラの芽かいな」
パパ 「そうだよ、春先の珍味ね」
「春、タラの芽を探すには、ガレ場がいいんだよ」
「その状態で1年もすると、次にススキが芽を出してくる」
ピー 「生態系が入替わるんだ」
「ススキも荒野に繁茂しているね」
パパ 「タラは、そのまま成長するんだけれど、人間が芽を
摘みたおすから、そのうち枯れちゃうんだ」
ピー 「人間の生態系への介入だね。自然が狂っちゃうんだ」
パパ 「それくらいでは、まだ狂わない」
「その後、ススキが大繁殖してくる」「見た目は趣があるけど、
単一植生なんで、庭としては面白くない状態になる」
ピー 「単一ではね~。で、どうするのさ」
パパ 「ススキを引き抜けばいいんだけど、毎年同じことの繰り返し
になる」「ここは時間を掛けて、自然を利用するのさ」
ピー 「自然の利用?」
パパ 「そう、自然だ」「単に日陰を作ればいいだけだよ」
「例えば、樹木を植えると、その周りに日陰が出来て、ススキは
自然に消滅していく」「樹木の成長を待つんだから、数年を
要するけどね」
ピー 「そうか! 森の中にはススキが生えていないね」
「自然を観察することによって、ススキは日陰に弱いという
性質が分かるのか~」
パパ 「そうだよ、単に花が綺麗、自然が綺麗だけじゃなくてさ、観察
をすることで、自然の営みというものが見えてくるんだ」
ピー 「しかし、時間の掛かる観察を何故するのさ」
パパ 「自然ちゅーのは、放置して置くとこうなる、人間が手を
加えるとこうなる、ということを知りたかっただけさ~」
「それを庭でやったわけよ。ま、箱庭だけどさ」
ピー 「何かの役に立つのかね」
パパ 「さーね、今のところ知るという満足感だけだね。ははは」
「で、ススキが絶えた後に無数の雑草が生えてくる」
「庭木も適当な大きさに剪定をしたりする」
ピー 「すると?」
パパ 「冬季はタイガのような風景になるし、暖かくなるとサバンナや
ステップやパンパのような風景なる」
ピー 「中学で習ったな。タイガ、サバンナ、ステップ、パンパ」
「おいらは、巨木がまばらなタイガが好きだな。寒いけどね」
パパ 「それで、雑草も適当な高さに成長してくると、
庭が湿潤になってくる」
ピー 「湿潤ね。そこから何かが出てきそうだな」
パパ 「可憐なホタルブクロが生えてくる。しかも自然にだよ」
ピー 「ホタルブクロが自然に生えてくるには、湿気が必要なんだね」
パパ 「そう、しかも雑草との混植が必要条件なんだよ」
ピー 「それがよく分からないね」「お互い生存競争にならないの?」
パパ 「ならないんだな~、それが」
「多分、雑草は湿潤を提供し、ホタルさんも何かを提供して
いるんだろうね~。 適度な日陰とかさ」
ピー 「ホタルブクロだけでは湿潤にならないの?」
パパ 「ホタルブクロは、成長と共に徒長してくるから、湿潤さを保つ
日陰を作れないんだと思う」
ピー 「それで、雑草の混み具合を利用するのか」
パパ 「それも、自分より背が低い雑草が望ましいんだ」
「観察していると、その辺の微妙さがよく分かるね」
「他に、柿の根元に茗荷を植えると、両者が共に繁栄
するとかさ、色々ある」
ピー 「昔から柿と茗荷は混植されているね」
パパ 「今、こういう自然を利用する伝承が絶えようとしているんだ」
ピー 「う~ん、長老に聞いておかないと、将来、自然のあるべき姿が
全く分からなくなりそうだね」
パパ 「それでさ、ホタルブクロだけ残して周りの雑草を刈り取って
しまうと、ホタルブクロも枯れてしまうんだな」
「環境が変わって、生態系のバランスが狂ってしまったんだ」
ピー 「湿潤じゃなくなったんだね。砂漠化だ」
パパ 「リンドウなんかも、雑草の中から自然と生えてくるよ」
「庭を管理せずに放っておくと、自然発生的に色んな植物が
生えてくる。しかも、環境の変化で植生が微妙に変わる」
「そういう自然の趣を楽しむのも、なかなか乙なものだ」
ピー 「花鳥風月か~、パパも風流だね」
「常に雑草を刈り取っているとどうなるのさ」
パパ 「自然庭園としては、何の趣も無い庭となるね」
「ホタルブクロやリンドウといった可憐な植物ほど、
先に絶えてしまう」「ま、適度な管理がいいと思うよ」
ピー 「適度な管理で、適度な自然環境にして置くのがいいのかな」
「ターシャの庭だね」
パパ 「最近、心配事があるんだ」
ピー 「植物の生態系で?」
パパ 「昔、町内に自生していたオナモミやイネ科のジュズダマを
見かけなくなったと思わないかい?」
ピー 「オナモミって、ひっつきむしと呼んでいたやつだね」
「そういやー、何処へいったんだろう」
パパ 「ジュズダマは、自生している場所を見つけてあるんだけど、
オナモミは見かけないな」
ピー 「そ~れで、散歩の時にキョロキョロしているのか~」
パパ 「以前、オナモミの実を採ってきて、庭で保存栽培して
いたけど、雑草と一緒に刈られて無くなってしまった」
ピー 「しっかし、パパも変わったことをするね」
パパ 「今やオナモミは、希少植物じゃけんね。保護しなきゃ」
「そうだ、面白いことを教えよう」
「ウツボカズラという食虫植物があるだろう」
ピー 「ひょうたん型をしていて、中に消化液が入ってるやつね」
パパ 「あの中にキャベジンとか太田胃酸を入れておくんだ」
「すると、消化が促進されてメチャ大きく成長する」
「時々精力剤を入れるのもいい。これは隠し技だ」
ピー 「ま~た、そういう冗談を言う」
「次回は何?」
パパ 「考え中・・・。色々あるからね~」
「ピートは、とりあえず自然観察をやりなさい」